FT夢
□34
1ページ/3ページ
ロキが星霊だったという報告に空いた口がふさがらなかったけど、だからどうしたという思いがすぐに表れた。別に、だからと言って何が変わる訳でもないし、彼もそれで良いとの事だった。
ただ、ルーシィと星霊としての契約を交わしたから、此方に来るのは門をくぐって星霊として呼ばれた時だけになったらしい。
「そういう訳で、二人の今後について話し合おうか」
「こらこら!!下ろしなさい」
ルーシィを横抱きたところで、ストップがかかる。…ロキってば、ルーシィちゃんのこと結構本気なんだなあと、遠目で思って微笑ましくなってくる。
「オレも星霊がほしいなぁ」と呟いたナツに、参考までに「どんな?」と聴いてみる。彼は間髪いれずに“竜”と答えた。竜かあ、竜の星霊とかいたら強そうだなあ。
いい加減鬱陶しくなってきたのか、ロキに帰るように命じて鍵をチラつかせたルーシィに、彼は待ったを掛けた。ポケットから取り出したのは、数枚のチケット。
アカネビーチのチケット。しかも、ホテルの宿泊券つき。心なしか、ただの紙切れのハズのそれが輝いて見える。
「楽しんでおいで」と言い残して、ロキはきゅるんと消えてしまった。言えなかったので、お礼は今度言おう。
「貴様等、何をモタモタしている。おいていかれたいのか」
その数秒後、大量の荷物をお抱えになったエルザ様が完璧なご支度をなされたご様子で姿を見せられた。
○ ○ ○
フィオーレでも有名なリゾート地であるアカネビーチ。とても一日では遊びきれない程の広さがある、らしい。実際あたしはどのくらいの広さか知らないけど。
アカネビーチは名前にビーチとつくだけあって、当然のように海が備わっているからだ。
だから
『水に入ろうという気持ちが、あたしには分からないね。
冷たいし、ふわふわぷかぷかするし、水が鼻に入ったら痛いじゃないか』
「…もしかしなくても、アイリスって泳げなかったりする?」
「ああ。水に顔つけんのも嫌がんだよ、コイツ…」
『心外だね相棒。あたしがこの2年、何もしなかったとでも?』
「あ?」
「何かしていたのか?アイリス」
『顔をつけて、水の中で目が開けられるようになりました』
「「「……」」」
「なあー!早く海いこーぜ海!!!」
微妙な空気をブレイクしてくれたナツに心の中で感謝しつつ、あたし達は男女に分かれて更衣室に入った。
私は水着を持っていなかったので、この日の為に水着を買った。よくわからないけど、ぱれお?というらしい(全部ルーシィとエルザに任せてちゃったから分かんない)やたらと生地の薄いそれを見て、自然と自分が身に纏った姿を想像した。…似合わない。
というか、このヒラヒラは一体どこにどう着るのだろうか…。
「アイリスー、着替え終わった?」
「いや、着方が分からなくて困ってる」
「えっ」
その一言を聴いて、シャーッと容赦なくカーテンを開けてきた、市松模様の水着を纏ったルーシィちゃん。うひゃあ!
いきなり開けるなんて破廉恥だな、そう言って苦笑いした私とは反対に、フリーズしたルーシィちゃんは、何故か眉間にしわを寄せた。
何かと思って、彼女の視線の先を追うと、それは私の左腕に注がれていた。
…ああ、成程。
『…ルーシィちゃん』
「っ、あ、ごめん!今着方を…」
『違う、聴いて。
この左腕は、キミのせいじゃない』
「……!」
『これは、幽鬼との戦闘での傷じゃないし、例えそうだったとしてもキミが自分を責める必要はないんダヨ』
ニッコリと、安心させるつもりで目を細める。
彼女は「…ありがとう」と、同じように笑顔を見せて、さあ着替えるわよ!髪も整えないとね!といつものように明るい姿を見せてくれた。
,