FT夢

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 そろそろ話さなくちゃいけないと思っている。誰にとかではなく、自分自身に。改めて、言い聞かせるように。


 あたしがラクサスに出会ったのは、妖精の尻尾にきて暫くしてからの頃だった。師匠から聴いていた、あたしと同じ雷系統の魔法を使う彼に、ずっと会いたいなと思っていた丁度その頃。




「アイリス、って言うのか。よろしくな」




 そう言ってあたしの頭を撫でる。始めて会ったラクサスは大人びていて、純粋にカッコイイなと思った記憶がある。いもしない兄を思っていた。だからこそ、あたしは彼を「ラクサス兄」と呼んだんだと、思う。
 いや、もしかしたら、幼いあたしはリサーナちゃんがミラやエルフマンを慕う姿や、それを愛でる二人に憧れを抱いていたのかもしれない。


 つまり、あたしは今ほど彼を恐れておらず、彼もあたしをそれなりに可愛がっていてくれて。
 というか、普通に、それなり以上に仲が良かったのだ



 それが、ある日を境に終わったのだ。急に、突然。



 ラクサスは急にあたしに冷たく当たるようになり、酷い時には手を上げられたことも――ギルドへの彼の考えが歪み始めたのもこの頃だ――少しイラついているだけで、すぐにいつもの彼に戻ってくれると信じていた。

 少し、あたしが我慢するだけ。寂しい思いをするだけ。


 ラクサスがあたしをどんな目で見ているのか知るのを恐れ、視線を合わせるのを止めた。

 少しでも彼の感情を掻き乱さないよう、姿を極力晒さなくなった。

 彼に嫌われるのを恐れあたしからも彼を避けるようになった。












「…アイリス?」

『…ごめん、ちょっとだけ甘えさせて』




 仕事を終えて、グレイとギルドのカウンター席で今日のことを離しながらアルコールを入れていたあたしは、彼の肩に頭を乗せるように寄りかかった。少し、泣きそうだ。
 グレイは何も言わずに、酒を一口呑んで、グラスを持っていない方の手であたしの髪を乱暴に撫でだけだった。




「珍しいな、お前が甘えてくるなんざ」

『そうかな。これでも結構自分には甘い方だと思うヨ』


「バーカ、全然足りてねえ。もっと甘えてくれた方がいいんだよ」


『…そう?』

「おう。相棒だろ」


『………。







 ミラジェーン、お酒追加…グレイがお勘定出すから…』

「オイ!!!」




121209

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