FT夢
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とは言ったものの、当てもない。
とにかく上を目指して進んでいると、他より天井が高く、開けた場所に辿り着いた。
中の瓦礫に寄りかかる人影を見つけ、更にスピードを上げた。
『エルザ!?』
「何でこんな所に…!!?」
「まさか…そのケガで戦ったのか……」
「あなたが、アリアを……」
傍に転がる男は確かエレメント4の1人で、この状況を見る限り、ナツではなく彼女がコイツを倒したのだろう。
こんな情けない姿、なんて言ったが、あたしにはエルザが傷だらけでも尚頼もしい姿に見えた。
刹那。
身体の中で、ワケの分からない何かが蠢いた。
一気に溢れる冷や汗。
それは皆同じのようで、
「な…何だ、この感じは!!?」
「ぬおおっ!!!漢にあるまじき寒気がっ!!!」
「なに…コレ…」
「いやいや…見事でしたよ、皆さん」
パンパン、と気持ちのこもらない拍手が聞こえた。
先程拡声器を通して聞いた声も、同様に全く気持ちがなかった。
「まさか、ここまで楽しませてくれるとは正直思っていませんでしたよ」
「マスター・ジョゼ!!!!」
『テメェ…』
嘔吐感さえ誘う膨大で邪悪な魔力を前に、あたしはぎり、と歯を噛み締めた。
コイツがギルドを、マスターを、ルーシィを!!!
「さて…楽しませていただいたお礼をしませんとなァ。たっぷりとね」
あたし、グレイ、エルフマンは、戦えないであろうエルザとミラを庇うように前へ出た。
怖くなかったと言えば嘘になる。
それでも、これ以上仲間を傷つけられることはもっと怖いから。
目の前に迫るジョゼの攻撃を、避けることはしなかった。
「がはっ」
「ぬああっ」
『っ、』
幸いにも、放たれた魔法は雷系のそれだった。
幾らか耐性のあるあたしはダメージとして殆ど無効だったが、まがまがしい魔力に包まれたことへの嫌悪感が爆発する。
グレイとエルフマンの叫び声がして、助けなきゃと思うのに…身体が、動かない。
ズガガガガ―――!!!
そのまま床を抉り、爆風が瓦礫を吹き飛ばす。
あまりの衝撃に膝をつくと、そんなあたしの真横をエルザが走って行くのが見えた。
黒羽の鎧に換装した彼女の刃は、迷うことなくジョゼを斬り付ける。
それを簡単にかわされると、今度はエルザが脚を掴まれ勢い良く投げられた。
空中で回って衝撃を脚で受けとめるようにした彼女は、キッとジョゼを睨んだ。
着地した彼女の傍に跳躍し、崩れそうになる肩を支える。
『…エルザ』
「貴様等…確か、ジュピターをまともにくらったハズ。なぜ立っていられる!?」
「仲間が私の心を強くする。
愛する者たちの為なら、この体などいらぬわ」
『…あたしはそんな大層な信念はないね。単純に怒ってるんだよ。
大切な大切な仲間を傷つけられて、サ』
「強くて気丈で美しい…なんて殺しがいのある娘達でしょう」
ジョゼの瞳が闇に光、あたしは両腕を構えなおした。
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