FT夢

□27
1ページ/3ページ




時刻は正午より少し前。

目覚めは最悪だった。

頭は痛む上、腰も酷く重い。


上半身を起こして着衣を探すと、既にズタボロのソレが見つかった(元々ガルナでボロボロになってたけど)

…お気に入りだったのになあ。

あれだけ破れていては、修復に出しても無駄だろう。

というか、奴は毎度毎度あたしの服をおじゃんにする気がしてきた。

その分新しいのはくれるのだが、正直あまりあたしの趣味ではない。




(フリルとかレースとかついてるんだよなー…)




あーいうのはルーシィの方が似合うだろうに、なんて想像してみる。似合うな、やっぱ。

ベッドの上でシーツを握り締め、ゴロゴロと転がる。


ふと、自らの左手が目に入る。

普段そちらの側だけ袖が長いのだが、勿論今の状態…素っ裸では袖もクソもない。

そこにはあたしの身体に刻まれる呪いの“刻印”とも呼べるものがあるのだが…

ご丁寧に、それを隠すように包帯が巻かれていた。




(ジークレインが…?)




ゆっくりの腕を撫で、その部分を凝視する。

いつもはしないのに、こんなこと。


今更だが、そういえば部屋にジークの姿がない。




「目が覚めたか?」

『!』




既に着衣を終えたジークレインが、トレーを抱えて扉を開けた。

緑茶の香りが鼻腔に触れる。

匂いで分かる。

彼の持つトレーの上のマグカップにあるのは、あたしの大好きなお茶だ。

それに気付くと身体は正直なもので、全裸にも関わらずシーツに包まりながらテーブルに座った。




「本能に忠実だな」

『まさか取り寄せたの?』

「湯呑みは間に合わなかった」

『あたしたくさん持ってるから。今度送ったげる』


「…そこは自分で持ってこいよ」

『二度と来ないよ、こんなトコ』




いや、あたしはコイツに呼ばれたら来なければならないのだけど。

マグカップを両手で持ち、手に温もりを与えつつ机の端を見やった。

同じトレーに乗せられていたと思われる新聞が目に入った。


あたしの手から滑り落ちたマグカップが、重力に従い床に落ち、割れる。

中から新緑色の液体が零れて床を濡らすのも、今は、どうでもよかった。

なりふり構わずその新聞を取ると、トップに大きく出ていた記事に唖然とした。




『“妖精の尻尾のチーム、シャドウ・ギア、何者かに襲われる”…!!?』

「南口公園に晒されていたらしい。ついさっき、妖精の尻尾が幽鬼の支配者へ強襲攻撃を仕掛けた話も出ている」




ジークはなんともない表情で、事実だけを述べた。

記事の見出しと共に大きく貼られた写真からも、3人の様子が見て取れた。


レビィの腹部には、

闇色で濃くエムブレムが描かれていた。

恐らく…幽鬼の支配者の、ギルドマークだろう。




『―――ジーク』

「なんだ?」

『あたしの服、何着か置いてあるだろ。

一番動きやすそうなの、持ってきなよ』




新聞をくしゃりと握り締めたあたしを見て、やれやれと言いたげにジークは部屋を出ていった。


ごめんセシリア。

貴方の言い付け、守れそうにないね。


,

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ