FT夢

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「オレたちのギルドを…」

『……随分と派手なやり方だネ。これだけされた喧嘩は買わなくちゃ』

「何があったというのだ…」


「ファントム」

「!」




呆然と立ち尽くすあたし達の後ろから、悲しげな声がする。

振り向いた先には、俯いて何処か申し訳なさそうにしているミラジェーンの姿があった。




「悔しいけど…やられちゃったの……」




一体何があったのか、詳しく訊きたい気持ちを押さえた。

彼女の案内で酒場の地下に降りると、ギルドのメンバーの視線が集まる。

悔しがっている者、怒っている者、悲しんでいる者、それぞれだった。

なのに、




「よっ。おかえり」




マスターは呑気に酒を飲んでいた。




「じっちゃん!!!酒なんか呑んでる場合じゃねえだろ!!!」

「おー、そうじゃった。おまえたち!!勝手にS級クエストなんか行きおってからにー!!!」

「え!?」

「はァ!!?」

「罰じゃ!!!今から罰を与える!!!覚悟せい!!!」




それどころじゃない、と暴れるナツを無視し、マスターは彼の頭を叩いた。

同様にグレイ、ハッピーと叩いて、ルーシィだけは何故かお尻を叩かれる。

あたしの頭上にも向かってきたマスター手を避けると、




『罰なんていつでも受けたげるよ。状況を分かってるんでしょ、マスター』

「ギルドが壊されたんだぞ!!!!」

「まあまあ、おちつきなさいよ。騒ぐほどの事でもなかろうに」

「何!!?」

「ファントムだぁ?あんなバカタレ共にはこれが限界じゃ。誰もいねえギルドを狙って、何が楽しいのやら」

「誰もいないギルド?」

「襲われたのは夜中らしいの」

「では、ケガ人は出なかった訳か…不幸中の幸いだな」

「ふいうちしかできんような奴等にめくじら立てる事はねえ。放っておけ」


なっとくいかねえよ!!!オレは、あいつら潰さなきゃ気がすまねえ!!!

『同感だね。このままにしとく言われはないヨ』




ナツが机を強く叩く。

彼の意見はごもっともだ。

やられたままにされるのは腹が立つ。すごく。

幽鬼の支配者という名に覚えはないけれど、売られた喧嘩は買って、倍の値段で売り返してやる。




「この話は終わりじゃ。上が直るまで、仕事の受注はここでやるぞい」

「仕事なんかしてる場合じゃねえよ!!!!」

『あたしが名前覚えてないようなギルドなんて、すぐに落としたげる、』


「アイリス、ナツぅ!!!いい加減にせんかぁ!!!」




そう言って怒鳴るマスターの手は再びルーシィのお尻へ。何故。

そのまま漏れそうだとか言って、マスターはトイレへ小走りに行ってしまった。




「何で平気なんだよ…じっちゃん…」

「ナツ…悔しいのはマスターも一緒なのよ。だけど、ギルド間の武力抗争は、評議会で禁止されてるの」

「先に手ェ出したのあっちじゃねーか!!!」

「そういう問題じゃないのよ」

「マスターのお考えがそうであるなら…」


『…興醒めだよ。ちょっと出てくる』

「!どこ行くんだよアイリス!!まさか…」




ギルドを出て行こうとするあたしの利き腕を、グレイが掴む。

心配そうに見つめてくる。

溜息を吐いて、彼に苦笑しながら、




『心配しなくても、一人で乗り込んだりしないサ』

「なら、」

『男のトコ』




そう告げると、グレイ以外の皆も面食らったようにあたしを見た。

この状況で何を言っているのかと思われているのだろうか。

グレイの手を払うと、あたしは足早にその場を立ち去った。




「…グレイ?あ、アイリスって、その、彼氏、いたの?」

「……知るかよっ」



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