FT夢

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「帰って来たぞー!!!」

「来たぞー!!!」




彼の元気は一体何処から溢れるんだと言わんばかりのテンションでナツが叫ぶ。

あたし達は、無事、マグノリアへと帰って来た。

二日酔いなのかナツの船酔いが移ったのか、あたしも船の上でダウンしてた。




「しっかし、あれだけ苦労して報酬は鍵1コか…」

「せっかくのS級クエストなのにね」

『あたしは結構納得してるよ。見返り少ないけど、楽しかったし』

「正式な仕事ではなかったんだ。これくらいがちょうどいい。お前達もアイリスを見習え」

「そうそう、文句言わないの!!!」




満面の笑みを浮かべるルーシィ。

まあ、彼女は得したからね…

納得してるとは言ったが…少しだけ不公平な気もする。




「売ろうよ、それ」

「何て事言うドラネコかしら!!!

前にも言ったけど、金色の鍵、黄道十二門の鍵は世界中にたった12個しかないの」




めちゃくちゃレアなんだからね、と少し拗ねたように言う。

ナツに至っては、そんな風には見えないらしく「あの牛やメイドが?」とからかう。




「あたしがもっと修行したら、星霊の方が絶対アンタより強いんだから!!!」

『そういえば、今回は何の鍵?』

「人馬宮のサジタリウス」


「人馬だと!!?」

「いや…こうじゃない?ナツに至っては馬でも人でもないよ、それ」




二人の間違ったイメージに苦笑するルーシィに、あたしは取り敢えず言うだけ言ってみようと思って、




『ねェ知ってる?黄道十二門って、売るトコによっては700万Jくらいするらしいよ

「何で今それを言うのっ!!?」






「さて…さっそくだが、ギルドに戻っておまえたちの処分を決定する」

「うお!!!」

「!!!」

「忘れかけてた!!」

『……何の話?

「アイリス忘れてんじゃねェ!!」




グレイに殴られてか、あたしはすっかり忘れていたことを思い出した。

そういえば、あたし達無断でS級来たんだっけ…資格ナシに。

あたしとグレイは止めた側とは言え最終的に一番ノリノリだったからね…




「私は今回の件について、概ね海容してもいいと思っている。

しかし、判断を下すのはマスターだ。私は弁護するつもりはない。

それなりの罰は覚悟しておけ」


「まさかアレをやらされるんじゃ!!?」

「ちょっと待て!!!アレだけはもう二度とやりたくねえ!!!」

「アレって何ー!!?」

『……』


「気にすんな。“よくやった”ってほめてくれるさ、じっちゃんなら」

「すこぶるポジティブね」


「いや…アレはほぼ決定だろう。ふふ…腕が鳴るな」

『……』

「アイリス?何処へ行こうというのだ?」

『うわっ!!』




そろりと距離を置いていたのが振り返ったエルザにバレた。

そのままあたしは首根っこ掴まれ、半ば引きずられるように連れられる。

彼女の逆の手に、同じようにナツがぶら下がっていた。




『あ…あたしは帰らないよ』

「いやだぁー!!!!アレだけはいやだー!!!!」

「だからアレって何ー!!!?」


「さあ、行くぞ」




反抗するのを諦めて大人しく引きずられるがままにしていると、とある事に気付いた。

やけに、町の人が此方を見る。

いや…これだけ騒いでたら目立つのは当たり前だけと。

笑われる、とかそんな目じゃなくて…

“哀れむ”ような目をして、何事かを囁くのだ。




「何だ…?ギルドの様子がおかしい…」

「ん?」

『オカシイ?』

「な…なに?え?」




エルザの声に、引きずられるあたしとナツも身を起こす。

動揺しているのは彼女だけでなく、ルーシィとグレイもだった。




「これは…」

『……ふむ』


オレたちのギルドが!!!!




あたし達の目に飛び込んだのは、温かく迎えてくれるハズのギルドの、変わり果てた姿だった。

看板は何当分にも割れ、壁や屋根も瓦礫になっているところが多々ある。

それ以上にあたし達を圧倒したのは、その建物に突き刺さるたくさんの巨大な鉄柱だった。



⇒あとがき

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