FT夢
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翌日。
あたし達はガルナ島を出る準備をしていた。
短い間とは言え、あたしの二年の生活を考えれば、滞在期間は長い方だ。
「キズ…のこっちゃいそうね」
「あ?別にかまわねーよ」
グレイの額に出来た傷を見て、ルーシィがそう言う。
あたしもアレは跡になるかも、と思った。
だから昨晩舐めてあげようかと申し出たのだが、全力で断られた。しゅん。
「顔よ」
「キズなんてどこに増えようがかまわねえんだ。目に見える方はな」
「お、うまい事言うじゃん」
『……』
「はぁ?見えないキズって何?」
「うるせーよ。カッコイイ事言ってんだからほっとけよ」
「今のが?…アイリス分かるか?」
『ナツと同じ事考えてた。何?なぞ掛け的な意味?』
「ドンマイ、グレイ(アイリスにアンタのカッコイイセリフは通じてないわ)」
「クソォオ!!!」
グレイの出したなぞ掛けが解けずうんうん唸っていると、村の人達と話しているエルザの姿が目に入った。
なんでも、今回の報酬の話らしい。
確か、700万Jと黄道十二門の鍵が貰えるんだっけ。
ところが、彼女達の会話を繋げると、あたし達には報酬がないらしい。タダ働き、だと?
「昨夜も話したが、今回の件はギルド側で正式に受理された依頼ではない。一部のバカ共が先走って遂行した仕事だ」
「ほがぁ…それでも我々が救われた事にはかわりません。
これはギルドへの報酬ではなく――友人へのお礼という形で受け取ってくれませぬかの?」
ニッコリと笑う村長さんを見て、エルザは仕方ないと言ったように首を振った。
「そう言われると拒みづらいな」
「700万J!!!」
「おおお!!!」
『エルザちゃん抜いて5人だから、一人140万!!ヤッタネ!!』
まあ人間の本能という感じで、お金の話には弱い。
多額の報酬に喜ぶのも束の間、
エルザはしっかり者だった。
「しかし、これを受け取ってしまうとギルドの理念に反する。追加報酬の鍵だけ、ありがたく頂く事にしよう」
「「いらねーっ!!!」」
「いるいる!!!!」
なんてやり取りがあった後。
ボボさんの「ハルジオンまで送ります」という申し出を断ったエルザに連れられ、島の海岸まで赴いた。
そこにあったのは、まあ10人中10人が同じ意見を言うであろう外見の船だった。
「海賊船!!?」
「まさか強奪したの!?」
『流石』
「イヤよ!!!こんなの乗りたくない!!!」
「泳ぐならつきあうぞ」
「無理!!!」
結局、全員が海賊船に乗り込み
村人さん達に見送られ、あたし達はガルナを出発した。
「妖精の尻尾サイコー!!!」
この瞬間のあの言葉を、私は噛み締めた。
「行っちまったな」
「な…泣いてなんか、ないモンね!!!」
「てか…なぜなく…?」
「いいんですの?せっかくわかりあえた弟弟子さん…すなわち、愛、」
「いいんだ」
『またね、リオン』
「おっせーぞアイリス!!」
『わ、待ちなよ相棒!!』
「なぁ…ギルドって楽しいか?」
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