FT夢

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潤んだ瞳を乱暴に拭った。

立ち上がって、ナツの隣まで跳躍する。

足元は当然水浸し――じゃぽんという間抜けな音と共に着地し、両腕を構えた。


大きく腕を振りかぶったデリオラを睨んだまま、ナツ同様、拳に雷を宿した。




「よけろォオォー―――!!!!」

「オレは最後まであきらめねェぞ!!!!」

『同感だよォナツくん!!!死んでもぶっ殺したげる!!!!』




あたしとリボンと、ナツのマフラーが。

遺蹟に吹き込むすきま風に、揺られた。





―――ゴボッ!!!





右腕を大きく振り上げたデリオラが静止し、直後、音をたて砕けた。

岩のように…氷のように。

激しい音と共にバキバキと崩れるデリオラの姿とそれを見るあたし達を、足元の水の水面下が映していた。

まるで、見守るように。




「そんな、まさか…デリオラは…すでに、死んで…」




リオンの絶望する声の中に、感動の色が含まれていた気がした。




「10年間…ウルの氷の中で命を徐々に奪われ…

オレたちは…その最後の瞬間を見ているというのか…」


『長い時間、デリオラと戦っていたんだ…お前達の師匠は』




氷となって尚、弟子を守ろうと。

グレイの闇を、解放しようと。

デリオラの残骸に触れると一瞬で砂になって、思わず笑ってしまう。

声を震わせていたリオンは強く地面を叩き、悔しがるような――それでもやっぱり、感動しているような声色で




「かなわん…オレにはウルを超えられない」




涙を流した。

彼もまた、心を解放された。




「す…すげーな、おまえの師匠!!!」

「―――」




崩れるデリオラを呆然と眺めていたグレイの隣に立つと、あたしはナツの言葉に同意するよう頷いた。




「おまえの闇は、私が封じよう」





「ありがとうございます…師匠……」




これで、本当に全てが終わった。


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