FT夢

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傍にあった階段を下り、あたし達は地下へと参った。

そこには鋭い眼光を世界に向け、力強く吠える悪魔の姿があった。




「グレイ!!!アイリス!!!いたのか!!!」

「ナツ」

『止められなかったか…』





仕方ないか…

手加減はしてただろうけど、ウルティアが相手ならあたしもそんな余裕はない。

半・放心状態のあたしとグレイに向かって、ナツが駆けて来て、

デリオラを指し示しながら、




「こうなったらやるしかねえ!!!あいつぶっ倒すぞ!!!」




突然の言葉に驚くも、そんな暇はない。

あたしは頷いて、目の前の化け物への集中を高めた。




「ククク――おまえ…ら…には、無理だ…あれは…オレが…ウルを超える為に…オレが…」




体を引きずりながら、リオンはうわごとのように話す。

やっと会えたな、と。

デリオラに向けて笑った。


あたしは、彼の事をよくしらない。

ウルさんに至っては、氷の姿でしか会えていない。

それでも。

リオンがここまで執着する意は汲み取れた。




「あの…ウルが…唯一…勝てなかった怪物…。今…オレが、この手で…倒す……

オレは…今…アンタを…超え…る…」





―――ビシッ





的確で正確で確実な一撃が――リオンの首にたたき込まれた。

彼の弟弟子からのその一撃は先程までの攻撃とは違い、何処かやさしさを帯びていた。

倒れこむリオンの身体を寸でのところで受け止め、抱えたままそっと床に下ろした。


胸騒ぎが治まらなくて。

嫌な予感がする。




「もういいよ、リオン。あとは、オレにまかせろ。

デリオラは、オレが封じる!!!!」




デジャ・ヴュ。

さっきみたばかりの構えを――グレイは再び取った。

やっぱり、そう思ったあたしが何処かにいた。




絶対氷結アイスドシェル、』

「よ…よせ!!!グレイ!!!あの氷を溶かすのにどれだけの時間がかかったと思っているんだ!!!

同じ事の繰り返しだぞ!!!!いずれ氷は溶け…再び、このオレが挑む!!!!」

「これしかねえんだ。今…奴を止められるのは、これしかねえ」


『……』




あたしは、何も言わなかった。

自らの手の平に爪が食い込む感覚を、何処か遠くで感じる。

さっきは取り乱して泣いてしまったけど…

今は、単純に…怒ってる。


その感情を堪え、二秒程目を閉じて、開眼する。

と、絶対氷結を発動しかけたグレイの前に、真剣な面持ちで―――ナツが立っていた。




「ナツ!!!」

「オレはアイツと戦う」

「どけっ!!!邪魔だよ!!!!」


『…まだ分からないのか、糞野郎』

「!アイリス、」

『ナツがあの時、お前を殴ってでも止めた理由を』


「死んでほしくねえから、あの時止めたのに。オレの声も、アイリスの涙も届かなかったのか」

「……」

「やりたきゃやれよ、その魔法」

『ここまで言って聞かないなら、あたし達はもう、知らない…』

「ナツ…アイリス…」


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