FT夢

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「もうコソコソするのはゴメンだ!!!」

『っ、あ』


「邪魔しに来たのはオレたちだァ!!!!」




ナツが物陰から身を乗り出し、天に向かって炎を吐いた。

向こうは突然の人物の登場に驚いているようだった。…いや、あたしもだけど。

普通真横で炎吐かれたら誰だってビビるって!!




「何をしている。とっとと村を消してこい」

「お?」

「え?」

「何で?」


「邪魔をする者、それを企てた者―――

全て、敵だ」


「何でえっ!!?」

『……ふむ』


「てめえぇぇっ!!!!」




今度は逆隣で声がした。

腰が抜けるかと思った。


走りだしたのは他ならぬグレイで、あたしがそう気付いた時には、彼は既に零帝と対峙していた。




「その下らねえ儀式とやらをやめやがれぇぇ!!!!」




勢いに任せるように、グレイは氷を放つ。

それを零帝は同じ氷で止めた。

凄まじい、爆音。冷気。


そして――――相殺。




「リオン…てめえ、自分が何やってるかわかってんのか?」

「え?」

「ふふ。久しいな、グレイ」


『知り合い…にしては、』




随分似ている二人だ。

鋭く睨み付けるグレイに対し、零帝…リオンは涼しげな声を返した。

頭がついていかない。


ただ向かい合う二人を交互に見つめ、息を吐いた。

張り詰める空気が、徐々に氷っていく。




「何のマネだよ!!!コレぁ!!!」

「村人が送り込んできた魔導士が、まさかおまえだとはな。知ってて来たのか?それとも、偶然か?

――昨晩の化け物女も、仲間のようだしな」


『!』




反射的に、頬から雷が漏れる。

バラされたら、そう思ったら心臓が五月蝿い程跳ねた。


化け物という形容だけでは分からない…早めに潰しておくべきだろう。




「早く行け。ここはオレ一人で十分だ」

「はっ」

「おおーん!!!」


「行かせるかっての!!!」




村を潰しに向かおうとする奴らを止めようと、ナツが駆け出した。

その瞬間に空気キラリと輝き、刺すような冷気を感じた。

「よせ!!!ナツ!!!動くなっ!!!」そのグレイの言葉を、あたしは直ぐに理解する事となった。

凍結し始めるナツの身体。

伴って、あたしの足元も冷たくなってきた。




「うああっ」

『……冷たい』

「ハッピー!!ルーシィを頼む!!!」

「あい!!」

「ちょっ…」




ハッピーはグレイに言われ、ルーシィを抱え飛び立った。

気を逸らそうとしたのだろう。グレイはリオンに攻撃を続けた。

冷たさは既に腰まできていているが、あたしの思考は未だ止まらない。




「スキをつくって、女と猫を逃がしたか…まあいい……奴等ごときじゃ、シェリーたちは止められんだろう」

「妖精の尻尾の魔導士を甘く見るんじゃねえぞコラァ!!!」




――――ガコッ




何の、音?

目だけで音を追うと、グレイが凍り付けになったナツを蹴っていた。

転がっていくナツに、思わずふっと笑った。

相変わらずだナァ、相棒…?

優しくない優しさを与えられるのはお前くらいだよ、あたしの知る中では。




「相変わらずムチャをする。仲間じゃないのか?」

『ねェ、これ冷たいんだけど…壊されたいの?』

「挑発するなアイリス…ソレは、その気になれば氷ごと中身を破壊できるナツのと同じようにな」

「なるほど。それでオレの魔力の届かない所へやった訳か。やればできるじゃないか」


「いい加減先輩面すんのやめてくんねえかな。

―――リオン、おまえはもうウルの弟子じゃねえ」




冷たい氷と、男の仮面。

その二つに反射する月の光を呆然と見つめた。

美しくも妖しい光は、夜のガルナ島に堂々と降り注いでいる。


と、リオンが仮面に手を掛けた。

意外にも軽い音と共に、彼の素顔をも月が照らした。




「おまえもさ、グレイ。ウルはもうこの世にいないのだからな」

「デリオラを封じる為に命を落したんだ!!!!ウルの残したものを、てめえは壊そうとしてるんだぞ!!!!」

「記憶をすりかえるな…ウルはお前が殺したんだ。グレイ」




言葉を返せないグレイに、リオンは言葉を重ねた。

冷酷な――――氷のような言葉を。




「よくおめおめと生きていられたものだな」



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