FT夢

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あたし達が凄まじい音に目を覚ましたのは、それから間もなくの事だった。

遺跡全体が響くような音と共に天井が開き、紫の光が真っ直ぐデリオラに当たっていた。

偶然にしては…出来すぎてる。




「行くぞ!!光の元を探すんだ!!!」

「オウ!!」

『(珍しくナツがグレイに従った)』




呑気にそんな事に感心しながら階段を駆け上がる。

握り締めたリボンで、いつもより大雑把に髪を束ねた。

上っているうちに気が付いたが、この遺蹟のド真ん中には穴が開いていた。

地下に月の光を導く為…月の雫の儀式の為の。

更に上を目指すうち、あたし達はやがて遺蹟の屋上部分にまで上り詰めた。




「何だアレ」

「しっ」




穴を中心に円になった人々が、怪しげな呪文を唱えている…儀式の真っ只中だ。

当然、月の雫の事をしらないナツ達は月から射出される光に戸惑っているようで、




「月!!?本当に月の光を集めてんのかこいつ等!!」

「それをデリオラに当てて…!?どうする気!!?」

「ベリア語の呪文…月の雫ね」

『……誰?』




隣で喋るお嬢さんが誰か分からなくて本年を漏らすと、どうやらルーシィの星霊らしい。

彼女の口から聞こえた月の雫…この儀式のことを知っているらしい。



「こいつ等は、月の雫を使ってあの地下の悪魔を復活させる気なのよ!!」

「何!!?」

「バカな…絶対氷結は溶けない氷なんだぞ」


『それを溶かすのが、この月の雫…

月の魔力がこれ程までに集束されれば、高難度魔法の解除も出来るサ』

「そんな…」


「あいつ等…デリオラの恐ろしさを知らねえんだ!!!」


「この島の人が呪いだと思ってる現象は、月の雫の影響だと思うわ。

一つに集まった月の魔力は、人体をも汚染する。

それほど強力な魔力なのよ」




それは……少し違うけれど。

まあここまで別れば、合格ラインだろう。

あとは――――理由だけ。


怒りに歯を食い縛るナツはそのまま出ていこうとする。

と、それをルーシィが制止した。


「誰か来たわ!!!」という言葉に目をやると、そこには昨夜の仮面男がいた。

……どうやら、アイツが主犯各らしい。


ウルティアから愛の催眠(響きはえろいが、ただの催眠魔法)を貰ったあたしだ。

次は負けない。

思わず力むと、僅かにバチッと放電してしまった。




「あいつが零帝か!?」

「えらそーな奴ね。変な仮面つけちゃって」

「そっかなぁ。かっこいいぞ」

『あたしはナンセンスだと思うヨ』


「デリオラの復活はまだなのか」

「この調子だと、今日か明日には…と」

「どっちだよ!!!」

「いよいよなのだな……」




嬉しそうに口角を吊り上げる男。

一瞬、背筋がゾワッとした。

ワケもなく、首筋に手が伸びる。

そして獣耳さしみ刺青のオニーサンがうざ可愛く見える。




「侵入者の件だが、ここにきて邪魔はされたくないな」

「ええ」

「この島は外れにある村にしか人はいないハズ―――

―――村を消してこい」





なんと、まぁ。

大胆な行動に出たものだ。

呆れるのを通り越して感心しそうだった。


零帝と呼ばれた仮面男がそう言うと、痛いオンナノコ含めた三人はその命令を肯定する意志を見せた。


村の連中は儀式の妨害に全く無関係だ。

儀式の事すら知ってるのかどうか…


慌てるあたし達の隣で、




「この声…オイ……ウソだろ…」




グレイが焦るような、疑うような声を発した。

あたしには何の話か分からない。



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