FT夢

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珍しく取り乱すグレイに、呆気に取られたくらいだった。

ナツもルーシィも、ハッピーも同じように、グレイの反応に戸惑っていた。




「バカな!!!デリオラが何でここに!!?」

「デリ…?知ってんのか?コイツ」

「あり得ねえ!!!こんな所にある訳がねえんだ!!!あれは…!!!あれはっ!!!」

「ちょっと…!!!おちついて、グレイ!!!」




優しく声をかけるルーシィに対しても何処か浮ついた反応だ。

身体が、小刻みに震えている。




「ねえ…何なの、コイツは!?」

「デリオラ……厄災の悪魔…」

「厄災の悪魔…?アイリス、知ってるか?」

『悪魔は専門外だよ。あくまで、呪いとか解呪の類だけ』


「あの時の姿のままだ…どうなってやがる…」




あの時?

その言葉を聞き返そうとしたその時、無意識にぴくりと肩が跳ねた。

人の、気配。


それを感じた直後に、足音らしきものが聞こえてきた。




「誰か来たわ!!」

「ひとまず隠れよ!!」

「何で?」

『見つかると厄介。ホラ、早く』




不思議そうに首を傾げるナツを、毎度定番の姫抱っこでハッピー案内の元岩陰へと運ぶ。

遅れてグレイとルーシィも隠れ、あたしたちは現れる人を息を殺して待った。




「人の声したの、この辺り」

「おお〜ん」




比較的小柄に思える、眉毛が特徴的な男と、頭から獣のそれを思わせる耳をつけた男。

慎重な足取りで、二人はデリオラの置かれるこの部屋の奥まで歩み寄る。

……さっきの仮面の男ではなかった。




『……グレイ、大丈夫?』

「……」

『顔が暗い』




俯くグレイの手を握ると、やはりまだ震えているのが伝わった。

強情だ。

触れただけで強がっているのはバレバレだけど。




「月の雫?呪いの事かしら?」

『惜しいなルーシィ。もうあと半歩くらい』




真面目に敵の様子を観察してたルーシィの呟きにてこ入れする。

月の雫は呪いではない。

莫大な副作用はあるけれど、違うんだ。


と、今度はヒールの軽い音が狭い空間に響いた。




「ユウカさん、トビーさん。悲しい事ですわ」

「シェリー」

「おおーん」

「アンジェリカが、何者かの手によっていたぶれました…」


『アンジェリカ?ダレ?』

「おっきなネズミだよ!遺跡に入る前に、ナツとグレイがボコボコにしたんだ!」




ハッピーは何故かすこしご機嫌そうに答えてくれた。何故笑顔。可愛いけど。




「ネズミじゃありません…アンジェリカは、闇の中を駆ける狩人なのです。

そして、愛」


『……』

「強烈にイタイ奴が出てきたわね」

「あいつら、この島のモンじゃねえ…ニオイが違う」

「うん…それに、呪われている感じがないよ」

『一人怪しいのがいるけどね』




あたしもくんくんと鼻を動かすと、成る程、確かに少し…外の匂いがする。

「侵入者……か」眉男が呟いたその一言に、あたし達は内心ドキリとする。

あれだけあたしが大暴れしたのに…まだバレていないのか…。




「もうすぐお月様の光が集まるというのに…何て悲しい事でしょう…」

(こんなバケモノ解き放って…一体何をするつもり?)



「零帝様のお耳に入る前に、駆逐いたしましょう。そう…お月様が姿を現す前に……」

「だな」

「おおーん」

「デリオラを見られたからには、生かしては帰せません。侵入者に永遠の眠り…つまり“愛”を」

「“死”だよっ!!!殺すんだよっ!!!」




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