FT夢

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『っはぁ、は…っクソッタレ…!!』




呼吸を整える為、気休めに胸を押さえ付ける。

遺跡を背に、入口で大きく息を吐いた。

空はもう大分白んでおり、朝を告げてる。




『これだから造形魔導士は苦手なんだよ!!スピード戦に持ち込みやがって!!』

「誰の事だコラ」


『はにゃまっ!??』




苛立って遺跡の外壁をげしげし蹴っていると、突然首根っこを掴まれ、身体が宙に浮いた。

頭だけで振り向くと、そこには口は笑っているけど目が笑ってないグレイが。

後ろにはナツ、ハッピー、ルーシィの姿もある。




『あ……や、やぁグレイ』

「なんで全世界の造形魔導士敵に回すような発言してんだよ、ったく…」

『ヤダナーグレイサンノコトジャアリマセンヨ』


「つうかてめ、なんで1人で勝手に、」



「アイリスのバカヤロォォオォォ!!!」

「!!?」

『もしゃっ!!?』




突然グレイに飛び蹴りが入り、拘束されていたあたしも伴って遺跡の中にまで吹っ飛んだ。

再び痛みだした腕をバレないように庇いつつ、身体を起こす。

桜色を視界に捕えると、キッと目を細めた。

グレイもあたしの後で間髪入れずに、




『馬鹿野郎はお前だよナツ!!いくら何でも飛び蹴りは酷い!!』

「オレなんかとばっちりじゃねぇか!!!」

「置いてったアイリスのせいだっ!!」


「っ、て、ていうかアイリス!!その傷、」




ルーシィに指摘され、いつものように受け答えをする。

手の平と頬からバチッと放電し『治療済みサ』と笑うと、彼女は安心したように笑った。


そういえば……さっきの男に口封じするの忘れてたなあ。

皆に余計な事喋らないようにしないと。

じゃないと―――あたしはギルドにいられなくなる。




「それにしても広い遺跡ね…」

『確かに、造りは古いけど…中々の大きさダヨ』


「見ろよ。何か月みてえな紋章があるぞ」

「この島は元々月の島って呼ばれてたって言ってたしな」

「月の島に、月の呪い…月の紋章。この遺跡はなんか怪しいわね」


『クク…どうする二人共?ルーシィちゃん一人で正解に辿り着きそうだぞ』




挑発するように笑うと、二人は顔を顰めた。

こういう古い建造物は、個人的に好奇心を擽られる。

……考古学者でも目指そうかな。

なんて冗談半分な事を考えていると、ナツが「それにしてもボロいな…これ、地面とか大丈夫なのか」と言って、

ガンッと地面を蹴った。




――――べこん!!!




間抜けな音をたて、床はナツが蹴った所からガラガラと崩れていく。

当然、あたし達も真っ逆様に落ちていく。




『うわわっ』

「なんて根性のねえ床なんだァァ!!!」

「床に根性もくそもあるかよ!!!」


「ハッピー!!!何とかならないの!?」




そうか、ハッピーなら飛べる!

そう思ってハッピーの方を見ると、身体を震わせ、声にならない悲鳴を上げていた。

どうやら喉に何か詰まらせたらしい。




「食べられるモンじゃないからー!!!それー!!!」

『マズイな』

「っ、アイリス!!」


『?、へ』




名前を呼ばれて目をやると、グレイに腕を引かれた。

そのままぎゅっと抱き締められ、グレイの胸板が頬にくっつく。

……は?



――――ズガァアアア



耳をつんざく轟音と身体への衝撃の後、感じていた浮遊感がなくなる。

あぁ…下の階に落ちたのか。

ボーっとそんな事を考えつつ、身体を起こそうとした。




(……あれ?)




身体が動かない。



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