FT夢
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『…………、』
驚いて、開いた口が塞がらない。
流石に悪魔は専門外――呪いの類はともかく――なので、名前までは出ないけど。
いや、というかこれは悪魔なのか?
このサイズは…この間の呪歌よりあるのではないだろう。
それともう一つ、
『あ、“絶対氷結”……?』
化け物を覆う氷に触れて、間近で見る。
さっきも言ったが…呪いの類には詳しい方だ。
この絶対氷結は呪いとは言わないが…永久的に閉じ込め封印するという点では立派な呪いだと思う。
それに…相棒の魔法くらいは一通り調べたつもりだ。
『一体、誰が……』
この魔法を使ったのだろうか。
「―――そこで何をしている?」
『しゃむっ!?、び、びっくりした…』
「…………」
こんな化け物目の前にして考え事してるんだ、急に話し掛けられたらビックリするだろう!
怒りに少し目を細めて、声の主を探す。
階段のすぐ傍に男の姿を捕えた。
頭は鎧兜で覆われ、大きなマントしてる。
「誰だ、お前は」
『人に名前を訊く時は自分から名乗るのが筋ってもんサ』
巨大な氷を背に、私は左足を下げて軽く身構える。
微量だが…島の外の匂いがする。
十中八九、月の雫を行っている奴等の一味だろう。
「儀式の邪魔でもしに来たか?」
『…YESと言ったら?』
「……消すまでだ」
その言葉を待ってたぜ。そう言いたげに口角を吊り上げると、右腕を掲げた。
先手必勝―――雷投環で男の足元を狙う。
それを簡単に避けると、
「アイスメイク、」
『っ、!?』
「“大鷲”」
冷たい声は、あたしの鼓膜に聞き覚えのある単語で届いた。
氷の―――造形魔導士!!
不規則な加速を繰り返す氷の鷲。
一羽、二羽…続けて避けたところで、内の一羽が脇腹を掠めた。
『いッ、』
口内に逆流した血を吐き出して、痛みに思わず瞑った目の片方を無理矢理開けた。
後方にぶっ飛びながらの不安定な状態で、空中に印を結ぶ。
『“邪悪爆雷”』
ぱちん、と指を鳴らせば、奴の足元が一瞬暗闇に飲み込まれ、直後電撃音を唸らせ爆発する。
まともに入った…そう感じながら、壁を蹴って宙返りして着地した。
顔を上げてみると、確かに彼の顔は僅かながら血飛沫に濡れていた。
「妙な魔法の使い方だな」
『魔法に使い方なんてあんの?初耳ダヨ』
壁に触れ、バレない内に“逆天雷撃”)を発動させる。
氷の造形魔導士…しかも“動”らしく、遠距離からの攻撃が可能。
男は近づく素振りを見せない。
これだけ距離があっては…タイムラグは痛いな。
……会話で時間を稼ぐか。
『此処で行われてるのは月の雫の儀式…間違いないかナ?』
「答える義理はない」
『…腹立つ』
あと、もう少し、
「アイスメイク“大鷲”」
『!』
絶望的な攻撃が、あたしを襲う。
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