FT夢

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『“月の雫”…懐かしいナ』




マグノリアに来てすぐ、町の魔法図書館で見つけた解除魔法の本。

流石にタイトルまでは覚えてないけれど…その本に、“月の雫”の事が書かれていたのを思い出したのだ。

…本当に、つい先刻までは完全に忘れていたんだけど。


村を囲む柵の前まで歩み寄り、自らの背丈の何倍もある柵に磁場を発生させ、垂直の壁をよじ登っていく。

大変じゃないけど…バランスを取るの難しいんだよね。

てっぺんまで登り切ってふぅと一息吐く。


そこから見える、変わった相貌の建物。

紫の月から射出される一線の光は真っ直ぐにそこに落ちている。




『……一体何をしてんだか』




ナツ達にも言った通り、今問題なのは呪い…月の雫による影響ではない。

恐らくあの文献が正しいのなら、彼等に起こっている異変は肉体ではなく精神にだろうし…。

問題なのは、




(何を解除ディスペルしてるか、だな)



地面に飛び降りると、駆け足でその建物を目指す。

名前なんて覚えてない。この島にある月の遺跡としか。


解除している物だけ確認する必要がある。

また呪歌ララバイのような魔法が持ち出されては寿命が縮まりかねない。

あたしは名を忘れた遺跡を目指した。
















遺跡に近づくにつれて、身体が重くなる。

右腕が疼く…あたしではなく、この呪いを拒絶しているのか…。


入った瞬間、焼かれるような痛みが走った。

額に汗が滲む。




(光、は…下か……?)




遺跡中央に空いた穴を通して、地下にまで光は届いているようだ。

近くの階段を辿り、地下へと降りる。


ただならぬ魔力を感じ、私は息を潜めた。

―――魔力?

―――違う、これは、




『冷気だ』




確信を持って呟くと、顔を上げる。

目の前には冷気の原因と思われる巨大な氷と――――


怨めしそうに顔を歪める、悪魔がいた。





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