FT夢

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「見れば見るほと不気味な月だね」

「ハッピー、早く窓閉めなさいよ。村長さんの話、聞いてなかったの?」

「何だっけ」

『月の光を浴びすぎると、あたしたちまで悪魔になるんだとサ』


「それにしてもまいったな」

「さすがに壊せってのはな…」

「うん…」




情けない事に、あたしたちは今後の予定に行き詰まっていた。

「何発殴れば壊れるか見当もつかねえ」そう言って拳を握るナツは壊す気満々らしいが、無理だろう。

気合いだけで何とかなるワケがない…それが、S級クエストだ。




「でも、月を壊せってのが依頼だぞ。できねえってんじゃ、妖精の尻尾の名がすたる」

「できねえモンはできねえんだよ!!」

『というか、ナツくんはどうやって月まで行く気なのかな』

「ハッピー」




天を差して相棒の名を呼ぶも、「さすがに無理」とあっさり却下。

ルーシィ曰く、“月を壊せ”という思いは被害者の観点から出てくる発想じゃないかという事らしい。

確かに、他に原因が有ることも考えられ――――






「!?ど、どうした、アイリス、」




突然声を出したあたしに驚いてか、グレイは僅かに上ずった声であたしの名を呼んだ。

ずっと頭の奥で絡まっていた絲はすっかり解け、曇っていた思考も晴れた。

この島に入ってからの膨れ上がるばかりだった違和感が一気に消え、私は笑む事さえ出来た。




『なんだ、そういう事か…』

「?…何がだ?」

『やっと手が届いたんだ、高いトコロの答えに』


「!?あ、アイリス…もしかして分かったの!?」

『分かったというか…“思い出した”かな』




くく、と喉から漏れる声を押さえ、あたしは後ろ髪を縛っていたリボンを解いた。

近くの壁に寄り掛かって、あたしは気分よく告げた。



『現状を見てハッキリ言わせてもらうと、急ぐ必要はないね。皆で答えを出したらいいサ』

「な、何言ってんだよアイリス!!」

『村で死者が出てるのに何悠長にしてるのかって?』




机の上に適当に畳んだリボンを置いて、あたしは布団にばふっと倒れこんだ。

フェアリーヒルズ含めたマグノリアの借家ではベッドが多いが、個人的には敷き布団の方が好きだったりする。




『そっちはあたしに任せてもらって構わないし、寧ろ問題はそっちじゃない』

「ちゃんと説明してよ、アイリス!」

『それじゃ破門になりかけてS級来た意味ないだろ。ヒントだけ出したげるよ』

「ヒント?」


『村長殿の言葉をよく思い出す事。そこから、さっきのルーシィちゃんのように仮説を幾つか立てて…あとは―――



本をたくさん読むことサ』




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