FT夢

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船はゆったりとしたスピードで進んで行く。

辺りはかなり暗くなり、頼りの月明かりも雲に覆われ少し心許なかった。




「今さらなんだけどさ…ちょっと怖くなってきた」




ルーシィが身体を震わせそう呟いた。

情けないが、少しだけその気持ちは理解できた。

静かな海からは異様な不気味さを感じる。


目を覚ましたグレイはぐるぐる巻きに拘束され、先程から文句ばかり垂れている。




「つーかオッサン!!何で急に船を出したんだ」

『そういえば聞きたいね。貴方はあの島に何か思うところがありそうだけど?』




膝枕をしてやってるナツを兎のように愛でながら、あたしは船を漕ぐ男に言う。

一心に目的地を見据える瞳からは、何やら決意が表れているようだった。




「オレの名はボボ…かつてはあの島の人間だった…」

「え?」


「変な名前だな…」

『そこ気にしなくていいよ』


「逃げ出したんだ。あの、忌まわしき呪いの島を」

「ねえ…その呪いって?」




ハッピーの質問に、船乗りは答えない。

聞こえていないワケでは勿論ないだろう。

ただ…言葉にするのを躊躇っている様子だ。

俯いていた顔を上げると、




「禍は君たちの身にもふりかかる。あの島へ行くとは、そういう事だ。

本当に君たちにこの呪いが解けるのかね?」




船乗りの身体半分程を覆っていた布が、風でまるで生き物のように動いた。

その下から現れた腕を、月明かりが照らす。

―――彼のそれは、間違いなく人間のモノではなかった。




「悪魔の呪いを」




息を呑んだ。

思わず、ナツを撫でる腕に力がこもる。




「オッサン…その腕…」

「呪いって…まさか…」


「―――見えてきた。

ガルナ島だ」




その言葉で、あたし達の自然は前方へと向けられる。

靄がかかってハッキリとは見えないが、あれが皆の言うガルナ島とやらなのだろう。


…頭の奥で、何かがコトリと音をたてた。

なんだろう…この気持ちは。

手を伸ばせば届きそうなのに、届かない…そんな所の物を取ろうとしている気分だ。




「ねえ……オジさん、!!

あ…あれ?いない?」

『え?』

「落ちた?」




あたし達は焦って辺りを見渡す。

ハッピーが海に潜って海底を確認するも、それらしき影はなし。




「な……何の音?」

『ん?どうしたのナツ……』


「きゃあああ!!!大波!!!」




ルーシィの声を聞き、急いでまた振り返る。

大波とよぶには足りないレベルの波が、此方に迫っており、咄嗟に身を屈めてナツに多い被さった。

守らなきゃ、そう思って手を握った。




「のまれるぞ!!!」

『見りゃ分かるサ!!さっさと氷らせなよ!!』

「縛られてんだから無理だろーが!!!」

「ハッピー!!!船を持ち上げて飛ぶのよ!!!」

「無理だよォ!!!」

「おぷ」

『あらやだナツくんが限界!』

「つーかコレほどけ!!!死ぬ!!!」




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