FT夢

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「これより、魔導裁判を開廷する。

被告人、アイリス・ヴォルティーニよ…証言台へ」




静かに裁判所に響く声に従い、あたしは歩み寄る。

見下ろす10人の人間の人種は老若男女、多種多様。

…蔑まれているような気がして、不愉快だ。




「被告人アイリス・ヴォルティーニよ。先日の鉄の森によるテロ事件において主は


オシバナ駅一部損壊、リュシカ峡谷鉄橋破壊、

クローバーの洋館全壊


…これらの破壊行為の容疑にかけられている」


『光栄だよ。でも、それ半分くらいナツくんがしたんだけどなあ』


「目撃証言によると…犯人は髪の長い東洋の服を着た女魔導士であり…」






ドゴォン――――!!!






見下ろす10人の1人が淡々と罪状を読み上げる最中…物凄い爆音が響く。

さっきまでの静寂は消え、騒つく部屋。

思わずあたしもその物音の現況へと目をやった。




「オレがその魔導士だーっ!!!捕まえられるものなら捕まえてみやがれぇぇっ!!!」

『……!?』

「オレがアイリスだァ!!!コラァァ!!!!何の罪だか言ってみやがれー――っ!!!!」




爆音に重なる爆音。

煙がもくもくと立ち込み始めて、思わず咳き込んだ。

全くこの竜は…行く先々でいつもあたしの予想の裏で暴走する。

何処で手に入れたんだ、その服とウィッグ。




「それぁギルドマスターの命よりも重てぇ罪なんだろうなァ!!!!あ?」




静まり返る中、ナツはあたしに向かってにっと笑ってきた。

それに溜息を吐くと、額を覆った。




「ふ…二人を牢へ」

『あっはっはー。スミマセンネ』

「アイリス!!こんな奴に謝る事なんかねえ!!!あ…いや……オレがアイリスだ!!!」

『もういいよそのネタ…はぁ、』




















「儀式!!?」

『形だけの逮捕サ。秩序を守る為にお役人共が、一応は働いている事を報しめる必要があったんだよ』

「なんだよ、そりゃ…意味わかんねー」


『つまり、あたしは有罪判決を下されてもお咎めナシで帰れたってこと。

―――ナツくんが暴れなければ、ね』

「えーっ!!」




絶句するナツに、追い討ちをかけるよう溜息を吐いた。

もごもごと口籠もる。

これだけ虐めればいいかな、とあたしはしょんぼりしているナツの背を抱き締めた。




「な、っあ、アイリス!!?」

『嘘だよ』

「っ、」

『来てくれて、嬉しかった…』




抱き締める腕の震えが、彼のマフラー越しに伝わってなければいいけど。

本年を言ってしまえば、怖かった。

1人でこの場所にいるのは心細い事この上なくて。

外面は気取っているけど、内面はワリとナイーブだ。




『ありがとナツ』

「……おう」




くせっけの髪をなでなでしていると、段々気持ちが落ち着いて来た。

……妖精の尻尾の皆、心配してないといいけど。




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