FT夢

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「アイスメイク…“シールド”」




グレイが手を合わせ、造形の動作をとる。

周りの人達は間に合わないだなんだ言うが…あたしは爆撃が目の前に迫っても動く気はなかった。


瞬間、目の前には厚く、そして美しい花を型取った氷が生まれた。




「速い!!!」

「あの一瞬でこれほどの造形魔法を!!?」



「造形魔法?」


「魔力に“形”を与える魔法だよ。

そして形を奪う魔法でもある」



「アイリスっ!!ケガねぇか!!?」

『全然』

「そ、そうか…よかっ―――」

『ありがと相棒』


「…!……へっ!」




ニヤリと笑うグレイを見て、あたしも仕方ないと言わんばかりに彼の隣に立った。

懐かしい―――この感情はそう呼ぶのだろう。




「アイスメイク“槍騎士ランス”!!!」

『“荒狂雷光ラーゼンシュトラール”』




グレイの両手から氷の槍が、あたしの左手の人差し指から雷の光線が射出され、一直線に怪物の巨体に向かう。

直撃を受けた怪物の身体には見事な風穴が出来た。




「な…なんて破壊力なの!!!」

「今だ!!!」



グレイのその声で、あたし達は一瞬で最後の一撃に備えた。


エルザは黒羽の鎧に換装し、ナツは両手に集めた炎を振りかざす。

あたしももう一度左手を掲げ、放電の準備を。







――――ドゴォン!!!








凄まじい音が響いたのは、目の前が強く瞬いた直後だった。

熱を帯びた風圧を正面から感じ、されるがまま、そのまま地面に尻餅をついた。


いたた…と腰を労ってから、前を見る。

無残にもボロボロと崩れていく怪物は、やがて定例会の会場に倒れた。

……あ。




「ゼレフの悪魔が、こうもあっさり…」

「こ…こりゃたまげたわい」

「かーかっかっかっかっ!!!」


「こ…これが…



これが妖精の尻尾フェアリーテイル、最強チーム!!!!」




まだ誰も気付いてはいなさそうだ。

バレる前に逃げるべきだろう。

と、立ち上がろうとしたあたしの前に手が差し伸べられた。

見上げると、そこにはニッコリと微笑むルーシィがいた。




「お疲れ様、アイリス」

「……本当。疲れたよ」


「カッコよかったわよ」





―――とても…格好よかったですよ





『!!!!』

「アイリス?」



突然顔を背けたあたしに、ルーシィが優しく名前を呼んだ。

そういえば…ルーシィの声と笑い方。

少し、あの人、、、に似ているかもしれない。


『なんでもない』ふるふると頭を振って雑念を払うと、彼女の手を掴んで立ち上がった。




「いやいいきさつはよくわからんが、妖精の尻尾には借りができちまったなァ」

「うむ」

「なんのなんのー!!!ふひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」




威張る総長を見て、思わず溜息を吐いた。

ていうか、早く逃げないとバレるんじゃ?


そう思っていると、総長もそれに気付いたのか、だんだん顔が青ざめ、冷や汗が流れ始めた。




「!!!」

「ぬああああっ!!!定例会の会場が…」

「ははっ!!!見事にぶっこわれちまったなァ」

『笑い事じゃないよ、ナツ。総長がまた始末書モノに…』



「捕まえろーっ!!!」

「おし、まかせとけ!!!」

『ナツは捕まる側だからな。行くよ』



ひょいっとナツを姫だっこ(本日三回目)をすると、小走りに駆け出した。

ナツはあたしの首に手を回して、頬赤くしながらぎゃーぎゃー騒いでる。子供か。




「やっぱ、アイリスとの仕事は超楽しいっ!!」

『!…ありがと』



ちょっと照れ臭くて、独り言のようにつぶやいた。





(鉄の森)

(錆付いた夢は終わりを告げて)

(やがて森の梅雨は明ける)


⇒あとがき

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