FT夢

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「これ…あたしたちがレンタルした魔導四輪車じゃないじゃん!!!」

「鉄の森の周到さには頭が下がる。ご丁寧に破壊されてやがった」




駅の近くに止めて置いた魔導四輪車は見事に木端微塵だった。

代わりが見つかったのはよかったけれど…無断で持ってきたのは如何ばものだろうが。

壊された方も、誰の所持品でもなくレンタル品だったので、まあ、普通に考えれば弁償だろう。

そのことを嘆いているルーシィに、




『あたし結構貯金あるから、そのあたりは心配いらないかもね』

「あ…そっか、アイリスって二年仕事に走ってたんだっけ」

『……ま、その通りかな。半分アタリ』

「?」




本当は―――

…誰にも、会いたくなかったから。




「な…なぜ僕をつれてく…?」




もう怪我は平気なのだろうか、カゲは結構流暢にぺらぺらとなんでも話す。

敵である自分がこの車に―――何の拘束もなく―――乗っている事に疑問があるのだろう。

それは妥当な感情だろう。

逆の立場ならあたしも当然問う。




「しょうがないじゃない。町に誰も人がいないんだから」

『クローバーのお医者さんにつれてったげるんだってサ』


「違う!!!なんで助ける!!?敵だぞ!!!

そうか…わかったぞ…僕を人質にしてエリゴールさんと交渉しようと…無駄だよ…あの人は冷血そのものさ。僕なんかの…」




ぶつぶつと呟き始めるカゲに、暗いとルーシィが蔑む。

確かに暗い…名前もカゲだし。

と、あたしの隣にいたグレイが「死にてえなら殺してやろうか?」などととんでもないことを口にした。

勿論本心ではないだろうけど…少し驚いた。





「生き死にだけが決着の全てじゃねえだろ?もう少し、前を向いて生きろよ。オマエ等全員さ…」

「、」

『あたしサ、死ぬ事って罰じゃなくて罪だと思う。あ、寿命とかは別だけどネ』




言い事を言ったグレイの頭をなでなでしつつそう言う。

嫌がられるかと思ったが意外にもグレイは拒まないようだ。


と、魔導四輪車がガタンと大きな音を立てて揺れた。




「エルザ!!!」

「すまない、大丈夫だ」

『………』




そう言うが、彼女の息はかなり上がっている。

虚ろな瞳を見る限り、視界もかなり悪いのだろう。

強がりな彼女は二年経っても変わらないようだ。


エルザの手首からSEプラグを外し、自分のソレにつける。




「アイリス!?」

『あたし運転は出来ないから、エネルギーにはならせてもらうよ』




エルザはキョトンしていたが、あたしは絶対譲らない。

それを分かって、彼女は何も言わなかった。


後ろでは何か一悶着やってる。




「でけぇケツしてんじゃねえよ…」

「ひーっ!!!セクハラよ!!!グレイ、こいつ殺して!!!」

「オイ…オレの名言チャラにするんじゃねえ」




全くだ。

でも…この緩い感じが堪らない。


……少しだけ、“あの場所”に似ているからかな。




「そういやアイリス」

『うん?』

「体調は…もういいのか?」




小さくこくんと頷いたあたしの頬を、グレイの指が滑る。

くすぐったくて奴の顔を睨むが、あまり効果はなさそうだ。


気が抜け思わずバチッと漏電してしまうと、それが彼の指先に触れ、一瞬離れる。




『あ、』

「痛っ…」

『ご、ごめん……』




再び、追い掛けるように触れられる。

そのまま指はあたしの髪に触れ、くるくると弄んで、離れて、弄んで、離れ―――




「あの〜…おふたりさん……」

「『!!!!』」


「あたしたちがいるんですが…」




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