FT夢

□06
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「エリゴールの狙いは……定例会なの!!?」




事情を知らなかったルーシィに話すと、驚きからか、焦るように声を荒げた。


エルザはカゲの手当てを済ませ、今だ呼びかけを続けていく。

ナツは…無理だと言っているのに、魔風壁を突破しようと睨んでいる。


アイリスは……




「…大丈夫か?」

『―――へいき』




とても平気には見えないが。

壁に寄りかかって膝を降り、ずっと俯いたままのアイリスが、やけに小さく見えた。

長く伸ばした綺麗な髪が、地面に乱雑に投げられている。




『ごめん…何も出来なくて』

「いいから、休んでろ。仕事帰ったすぐで疲れてんだよ」

『…うん』




いつも…いや、二年前なら、『煩いな。あたしに気を使うなんざ10年早い』なんて言ってきただろう。

2年で随分大人しくなったし…それに、儚げというか…女らしくなった気がする。




「こんなモンつきやぶってやるぁっ!!!」




後ろでは激しい音をたて、ナツが魔風壁に向かって拳を振るっていた。

力じゃどうにもならないことは、馬鹿なナツだって分かってる。

どうしようもなくて、焦る気持ちが抑えられないだけだ。




「急がなきゃマスイよっ!!!アンタの魔法で凍らせたりできないの?」

「できたらとっくにやってるよ」


「ぬぁあああっ!!!!」

「ちょ…ちょっと!!!やめなさいよっ!!!バラバラになっちゃうわよっ!!!」




ルーシィの声も最早聞こえてないのか、ナツは一心不乱に風の壁に向かって行く。

と、オレの隣で俯いていたアイリスが顔をあげ、そのまま立ち上がってフラフラと歩いて行く。


向かった先は、ナツの、




『怪我してる』

「あ…アイリス?」

『やめて、ナツ』




怯えた瞳で、アイリスはナツに背中から抱きついた。

離れていく家族をいとおしむような、そんな顔だった。


そんなアイリスにナツは顔を真っ赤にしていた。

ナツに頬を寄せているアイリスには、ナツのそんな間抜けな顔は見えていないだろうが。


…ムカツク。




「そうだっ!!!星霊!!!」

「え?」




突然の思いつきのような発言に、星霊魔導士のルーシィが反応する。

ナツはアイリスの背に手を回しながら(オイ)、




「エバルーの屋敷で、星霊界を通って場所移動できただろ」


「いや…普通は人間が入ると死んじゃうんだけどね…息ができなくて。

それに、門(ゲート)は星霊魔導士がいる場所でしか開けないのよ」

『……?』


「つまり、星霊界を通ってここを出たいとしたら、最低でも駅の外に星霊魔導士が一人いなきゃ不可能なのよ」

「ややこしいな!!!いいから早くやれよ!!!」


「できないって言ってるでしょ!!!」

『…あれ?人間が星霊界に入るのは、星霊魔導士には契約違反だったよね?』

「そうよ。あの時はエバルーの鍵だからよかったけどね」


「エバルーの……鍵……あ―――っ!!!!」




突然大きな声を出したハッピーに目をやる。

思い出したと声を荒げるハッピーは、背中の包みから金色に輝く鍵をとりだした。




「これ」

「それは…バルゴの鍵!!?ダメじゃないっ勝手に持ってきちゃーっ!!!」

「違うよ。バルゴ本人がルーシィへって」

「ええ!!?」



「何の話だ?」

「こんな時にくだんねえ話してんじゃねえよ」




話の内容が分からず、オレとエルザ、アイリスはポカンとしたままその話を聞いている。

どうやら、この間のエバルー邸への仕事に関係しているようだが…

メイドゴリラだの、よく分からない。


どうやら鍵は星霊の鍵らしく、持ち主が逮捕され契約が解除された為ルーシィの元へ来たらしい。




「嬉しい申し出だけど、今はそれどころじゃないでしょ!?脱出方法を考えないと!!」

「でも、」

「うるさいっ!!!ネコは黙ってにゃーにゃー言ってなさい!!!」

『黙ってにゃーにゃー…?』


「バルゴは地面に潜れるし…魔風壁の下を通って出られるかなって思ったんだ」


「何!!?」

「本当か!!?」

『それなら、なんとかクローバーにいけるね』


「そっかぁ!!!やるじゃないハッピー!!!もう!!!何でそれを早く言わないのぉ!!!」

「ルーシィがつねったから」




ハッピーから鍵を受け取ると、ルーシィは一度大きく息を吸ってから、

鍵を握る右手の腕を前に出した。




「我…星霊界との道をつなぐ者。汝…その呼びかけに応え門(ゲート)をくぐれ。


―――開け!!!処女宮の扉!!!バルゴ!!!」





120214

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