FT夢

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『―――こっち』




口元をきゅっと結び、鼻をひくつかせた。

あたし、グレイ、エルザの三人はカゲを探す為――あたしの嗅覚を頼りに駅の中を歩いていた。




「流石、妖精の尻尾でもナツと並ぶ鼻だな」

『曲がりなりにも竜に育てられた身なんでね…っていっても、ちょっと彼の匂いは曖昧かな』




そう言って、あたしは再び鼻をすんすんと動かす。

と、突如不可解な香りが鼻の奥をついた。


この匂い…ポツリと呟いたあたしの言葉に二人が反応する。




「どうした?アイリス」

『…ナツの匂いがカゲの匂いと近いな』




あたしの嗅ぎ取った匂いは、僅かだがコゲ臭く、ナツが魔法を使っている事を連想させた。

そういえば彼はカゲに恨みというか、リベンジを燃やしていたし…

早速見つけて戦闘していると考えるのが妥当だろう。




『すぐそ』




こ、と言いかけたあたしの言葉は遮られた。

凄まじい、爆音…轟音によって。




「近いぞ!!向こうだ」

「こりゃあナツに間違いねえ」


『………ナツ!!』




走り出した二人に続いて行く。

そこには壁によりかかるカゲ、勝利の後の悦に入っているナツの姿があった。

エルザがそれ以上はいい、と言うと、ナツは言っている意味がよく分からなさそうな顔をした。




「アイリスっー!!会いたかったぞっ」

『まだ分かれてちょっとだろ…ったく…。兎に角助かった』

「説明してるヒマはねえが、そいつを探してたんだ」

「?」

「私にまかせろ」


「ぐふぅ―――」




カゲの胸倉をつかみ、呼びだした魔法剣で頬に刃を突き付ける。

冷やかな目を向け、脅し以外の何物でもない方法が起こる。




「四の五の言わず、魔風壁を解いてもらおう。一回NOと言う度に切創が一つ増えるぞ」

「う…」

「オイ…そんなボロボロなんだ、いくらなんでもそりゃヒデェぞ」

「黙ってろ!!!」

『………』




嫌な予感がする。

こめかみの辺りでぴりぴりとした小さなショートが消えない。




「いいな?」

「わ…わか…――ばっ―――ぶ、」




刹那、その予感は的中した。

口から吐血しながら倒れ込むカゲに、思わずエルザも拘束を解く。


倒れた彼の背中には、鈍い輝きを放つ―――刃があった。

大量の血液は傷口からどくどくと流れる。




「カゲ!!!」

「くそっ!!!唯一の突破口が…」




カゲを背で追い詰めていた壁からは、鉄の森のふくよかな体格の男が額に汗を浮かべていた。

壁に潜り込んでいる…魔法だろう。100%彼の仕業だ。




『………』




慌てるエルザ、グレイ…唖然とするナツ。

目の前の事が…ただ流れていく事が、信じられなくて。




「カゲ!!!しっかりしろ!!!おまえの力が必要なんだ!!!」




「仲間じゃ…ねえのかよ…」




ナツは震える声でそう呟く。

あたしは、ただ――悲鳴を上げて壁に潜り込む男にをただ見つめていた。




「同じギルドの仲間じゃねえのかよ!!!!」

『裏切り行為は…ユルサナイ』




翳した左手からバチィと雷を放つ。

壁に向かって殴りかかるナツを避けてあたしも壁に矛先を向けた。


腹が立って仕方ない。




「このヤロォオ!!!」

『“破壊ブレイク”』




視界が、霞む。




「カゲ!!!しっかりしないか!!!」

「エルザ…だめだ…意識がねえ」

「死なす訳にはいかん!!やってもらう!!」


『…こんな状態で魔法を使わせるのは、あたしは反対だね』

「やってもらわねばならないんだ!!!」



「それがおまえたちのギルドなのかっ!!!!」




皆の声が、感情が混ざる。


エルザの気持ちが分からないワケではない。

何せ、総長達の命がかかっているのだから。

だからと言って…別の命を危険に晒していい理由にはならない。




「お…お邪魔だったかしら……」

『!…ルーシィ、ハッピー…よかった、無事だった』

「あ、アイリス!!」


『緊急事態サ』




霞んだ目を起こすように、目を擦った。



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