FT夢

□05
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鎧が剥がれて、再び別の鎧が現れる。

大量の剣も美しすぎる鎧もまた、彼女の換装によって呼び出された。




「魔法剣士は通常、“武器”を換装しながら戦う。

だけどエルザは自分の能力を高める“魔法の鎧”にも換装しながら戦う事ができるんだ」


『それがエルザの魔法……騎士ザ・ナイト






「舞え、剣たちよ………循環の剣サークルソード






「間違いねえっ!!!コイツぁ、妖精の尻尾最強の女、

妖精女王ティターニアのエルザだっ!!!」





言葉通り一掃されていく鉄の森。

さて……あたしも一仕事しますか。




『“雷環投ヴルフロンド”』




ニヤリと笑って、両手の指先で回している二つの輪を数人の男に投げつける。

回転を加えながら、それは男の足元のタイルを抉って消える。

煙の合間から、焦る顔が伺えた。





「…ッ!?」

「ンだこの魔法はァ!??」



「す…スゴイ…これが、アイリスの魔法…!」

「アイリスの魔法はシンプルなんだ」




おしゃべりなハッピーが、律儀にもあたしの魔法をルーシィに説明している。

そっちに気を取られていると、魔法剣を持った男が至近距離まで迫っており…

あたしの腹部目がけて、斬りかかった。





『“破壊ブレイク”』

「ぐ、っ……ぎゃあぁあぁぁッ!!!?」



「身体に帯電している電気を操るだけの魔法だよ」

「っ、そ、それだけ…?」




そう、たったそれだけ。

あたしの魔法に、難しいトリックは一切ない。


“破壊”はその名の通り、破壊する為に電気を放つ。

全身から放った電撃は容赦なく周りの男達を一気に攻撃する。




「アイリスは魔法の使い方が柔軟だから、これを応用してるだけなんだ」

「だから…アイリスのほっぺから電気が漏れることがあったのね」




地面にそっと手をやり、目を閉じる。

また何かが起こると予想したのか、鉄の森の連中は怯えるように身構えた。


しかし、数秒経っても何も起こらない。

目を閉じたまま地面に触れるあたしを不思議に思っていたが、チャンスと思った彼等は再び向かってくる。


―――全身から力が抜けていくのを感じた直後、




『“逆天雷撃ジェルンテイル”』




ぱちりと目を開くと同時に、大きな電流の柱が地面から天井に向かって上がる。

巻き込まれた男達は悲鳴すら上げられず、髪を爆発させ、肌を黒くして吹っ飛んだ。




「…っ、アイリス!?」

『む…天井に穴開いたか……まあいいか、コイツ等のせいにすれば』







「アイリス……?」

「…アイリス・ヴォルティーニ…あの“氷の破壊姫トゥーランドット”が…何故此処に…!??」




取り残した二人の声が耳に入り、あたしは再び指先に雷環投を引っ掛け、投げつけた。

誰がつけた字かも知らないその呼び方は、あまり好ましいモノではないから。

あたしが滅多に笑わない事からつけられたらしいけれど…




「流石だな、アイリス」

『…エルザこそ。相変わらず素晴らしい換装だよ』

「二人共凄かったわ!!!ちょっとホレそうだったし」

「あい!!」




駆け寄ってくるハッピーとルーシィに口角を緩めた。

―――ホラ、あたしだって、一応…笑える。


と、その中で小太りの男が一人、悲鳴を上げて走って行く。




「エリゴールの所に向かうかもしれん。ルーシィ、追うんだ!!」

「えーっ!!?あたしがっ!!?」

「頼む!!」

「はいいっ!!!」




文句を言ったルーシィはエルザの睨みでそそくさと追いかける。

姿が見えなくなると、エルザは換装を解いた。

その額には汗が伝っている。




『やっぱり辛かったんだろ』

「!っ、そんなことは、」

『あー、ムリムリ。あたしじゃなくてもそれが嘘って分かるし』


「…すまない」




どうして謝るの?

不思議なエルザにくすくすと笑みをこぼした。



120212

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