FT夢

□04
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ナツの腕の中で、アイリスはぎゅっと目を閉じていた。

肩を抑える白い手の間から、僅かに赤い色が見え、ハッとした。



「アイリスに怪我させてんじゃねぇよ!!テメェ!!!」

「っ、何!?」

『…硝子で切った、だけ。直ぐ治す…』




アイリスは怪我をしている肩とは逆の手を翳し、電気を流す。

一瞬バチッと放電したかと思うと、手を離したときにはもう傷跡はなかった。




『大丈夫』

「兎に角…無事でなによりだ。よかった」



エルザがナツを抱き寄せると、そのまま鎧に押しあてる。

硬いと悲鳴を上げたナツは、すぐに何かを思い出したように顔を上げた。



「無事なモンかっ!!!列車で変な奴にからまれたんだ!!!」

「?」

「何つったかな?アイ…ゼン……バルト?」

鉄の森アイゼンヴァルト



ポツリと呟いたアイリスの言葉により、俺達の考えは確実となった。

一気に頭に血が登ったエルザは、ナツに平手打ちを食らわせた。

何故話を聞いていないのかと怒るエルザだが、実際、ナツはエルザの拳で気絶させられていたんだ。

聞いていなくてもムリはない。



『……ハァ』



溜息の主はアイリスだ。

姿勢を低くして、地面に座り込んでいるアイリスの顔を伺う。



「立てるか?」

『問題ないよ…お前こそ、でこは平気?』

「ん?あァ……」



僅かに痺れる額を押さえ、返事をした。

いつみたいにハの字に眉を下げ、目を細めた。



「さっきの列車に乗っているのだな。今すぐ追うぞ!!!どんな特徴をしていた?」

「あんまり特徴なかったなぁ」

『なんか、髑髏の笛持ってたよ。三つ目の』

「何だそりゃ。趣味悪ィ奴だな」


「三つ目のドクロの笛…」




顔を青くして何やら考え込むルーシィを、皆が心配して目をやる。

違う、違うと何かを呟くが、やがて確信に至ったように声を上げた。




「その笛がララバイだ!!!!」

『?』

呪歌ララバイ…“死”の魔法!!!!」




馴染みのない言葉に、首を傾げた。

オレの後ろで身体を起こしたアイリスが何だかしまったという表情で前髪を掻き上げた。




あの、、呪殺か…面倒なもの持ってきたね』

「知ってんのか?アイリス」

『うん。ついばむ程度にな』


「禁止されてる魔法の一つに、呪殺ってあるでしょ?」

「ああ…その名の通り、対象者を呪い、“死”を与える黒魔法だ」

呪歌ララバイはもっと恐ろしいの」


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