FT夢

□03
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「コラァ!!!酒遅ェぞ!!!」




如何にもガラの悪い男が、酒が遅いと店員に怒鳴り付ける。

店員の対応は悪くはないのだが、男は何かに苛立っている様子で、酒が遅いという些細な事に腹を立てていた。




「ったくよォ、なにモタモタしてんだよ!!!」

「す…すみません」


「ビアード、そうカッカすんな」

「うん」




同じ席についていた男達が、ビアードと呼ばれた男を諭す。

これがイラつかずにいられるか、と男は更に腹を立てた。

店員の手元のグラスから、魔法と思われるモノで酒がビアードの手元のグラスに移る。




「せえっかくララバイの隠し場所を見つけたってのに、あの封印だ!!!

何なんだよアレはよォ!!!まったく解けやしねえ!!!」


「バカ!!声がでけぇよ」

「うん。うるせ」

「くそぉっ!!!」




悪態をついて、酒を大雑把に飲む。

と、同じ席に着きながら一人黙っていた優男風の男がニッコリと微笑んだ。




「後は僕がやるから」

「エリゴールさんに伝えといて。必ず三日以内にララバイを持って帰るって」 と―――。


――――――――――

――――――――

―――――

――




「ララバイ?」

「子守歌…眠りの魔法か何かかしら」

『…封印されてるんだろう?と言うことは、』

「あぁ。かなり強力な魔法だと思われる」


「話が見えてこねえなァ……」




確かに、グレイの言うことは最もだ。

今の話の内容からは、ララバイという魔法の封印を解こうとしている魔導士がいることしか分からない。

エルザがわざわざ人を助けを呼ぶような内容ではないように思える。



「仕事かもしれねえし、何て事ァねぇ」

「そうだ…私も初めはそうきにかけてなかった――――エリゴールという名を思い出すまではな」




カンカンカン、と渇いた音が数回響き、列車が無事駅に辿り着いたことを告げた。

立ち上がったエルザを見て、グレイがようやくあたしを離した。


荷物を早々に降ろして列車を降りる三人。

話に集中して気づいていないのか、彼らは気絶というか悶えているというか、そんな状態のナツを置き去りにしようとする。




『え、ちょ……』




どっちについて行こうか、迷う。

ただ乗り物の中にナツを一人置き去りにするワケにはいかないと頭が言っているので、取り敢えずナツを―――




『!』

「、アイリス……」




そうか、今は駅だから、列車が止まってるから……

動いてるときよりは幾分かマシにみえるナツが、あたしの服の裾を握った。

その仕草に、母性本能がくすぐられる。




『ど、どうしたのナツ』

「行く、なっ」

『うん。行かないけど、列車降りなきゃ。…ナツも降りたいよね?』




うんうんと激しく頷くナツを抱き上げて肩を貸そうと身を屈め、ナツの体重を小さく支えた時、列車が動き出して、




「う、っ!?」

『わわわっ』




揺れてバランスを崩して、そのままあたしは仰向けに倒れ込んだ。

必然的にナツがあたしに乗りかかる。




「……!」

『、うー…ナツ……ぅ』




見事に下敷きになった。

ナツの程良く筋肉とついた肌が密着して、急激に顔が熱くなる。

列車はそのまま動きだして、止まらない。

=ナツは動けない。




『ナツ、ごめん…頑張れる?』

「……む、り…だ」


『だよな』




苦笑して、どうにかナツの下から逃れようと身を捩った。



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