ill wisher
□ことばあそび
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『お兄様。…全員の招集が終了致しました』
「御苦労。お前は先に行っていなさい」
短く返事をして、みんなの所へ向かう。
まだ頭の奥がピリピリする。
昨晩は、勢いでお酒を大量に飲んでしまった。
兄様が言うには、「お前があんなに飲むなんて、この世の終わりかと思った」…らしい。
一応職業は学生の身分なのに二日酔いをしてしまっている自分に反省している。
「あ…名前!」
『…おはよう、りん』
「おはよお名前。珍しいやん、そないな服着てくるなんて」
息を切らせている名前を見て、志摩がそう言った。
確かに珍しい。
普段はゴシック系の服か制服なのに。
今日は“街中の普通の女の子”という感じの、七分丈のパーカーにチェックのスカートだった。
『“こももがえ”して、クリーニングに出したから……』
「………………こももがえ?」
「もしかして、衣替えの事?」
しえみがそう言った後、暫く間が空いてから名前は顔を真っ赤にさせ、俯いた。
微笑ましくなって笑っていると、相変わらずキテレツな服のメフィストが到着した。
「アインス、ツヴァイ、ドライ☆
無事、全員候補生昇格…!おめでとうございま〜す」
そう言って、メフィストはマジシャンさながらのポップな物を出した。
安心する俺達とは裏腹に、名前はずっと俯いたままだった。
「……名前、大丈夫か?」
『えっ、あ…うん……へいき』
言葉と態度が全く違う。
体調が悪いのか?
言われて見れば、照れているのとは違う感じで顔色が悪い。
「フフフ…では、皆さんの昇格を祝して…
このリッチな理事長である私が皆さんに…」
「おっ」
「お?お?」
「もんじゃをごちそうします☆」
「もんじゃかい!!せめて焼き肉」
『(兄様が食べたいだけじゃ…)』
ほんのりと柔らかく笑った名前を見て、少しだけ安心した。
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