ill wisher


□現実に追われて夢を追う
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「よぉ」





授業に来ると、燐がすぐに挨拶をしてくれた。

あれから、もう直ぐ行われる強化合宿の準備報告書をまとめたりで、なんだかんだしてるうちに学校をかなり休んでしまっていた。

燐の学園生活補助という役目を果たせてないな、私。





「学校も来ないし塾もこねーから、今日も休みかと思ったぜ」

『燐と一緒にしないで。いろいろ忙しいのよ』

「またメフィストの手伝いとかか?」

『そうだよ。…あと、私が兄様と兄妹だってこと誰にも言わないでよ』





何で?と訊いてくる燐をなんとか宥めて、私は席につこうとする、けど。

そこには既に先客がいた。





『…あぁ、』

「あ、こ、ここんにちは…」

『貴方が杜山しえみさんね。初めまして』





敬語を避け、なるべくにこやかに握手を求めた。

その手を握る彼女の手は若干震えていた。

名簿の赤面症というのは事実らしい。さらに上がり症…追記しておかなくちゃ。





『名前って言います。数教科しか授業取ってないからあんまり会えないと思うけど…よろしくね』

「こ、こちらこそ!!よ、よろしくね、名前ちゃん」

「え、祓魔塾って選択教科とかあんの!?」


『燐はちゃんと全部出なきゃダメでしょ』





きゃいきゃい騒いでいると、やけに背中に視線が刺さる。

誰か見てるなーと軽い気持ちで振り返ると、志摩が手を振ってくれていた。

軽く振り返して笑顔を見せると、彼が一瞬固まってから再び激しく手を振った。





(元気だなあ)

「次は雪男の授業だぜー…はぁ…」

























ということで、今日は志摩の隣に座らせてもらうことにした。

やけに勝呂くん(さっき自己紹介してもらった)が睨んでくるような…ううん…。





「それでは、この間の小テストを返します」





奥村先生はそう言って、どんどんテストを返していく。

私このテスト受けたっけ…休んでたかな?「名前さん」あ、呼ばれた。やってたらしい。





『はい』

「回答はおそらく正確なんですが…」

『へ?』

「イタリア語での記入は僕の採点の手を煩わせる為の嫌がらせ?」

『………………(多分、前日にバチカンの報告書書いてたんだっ…)』





0点の隣にカッコで100点と書かれたテスト用紙を複雑な思いで見つめながら席につく。

溜息を吐いた私の用紙を見て、志摩が目を丸くしていた。





「何?それ何語なん?」

『…イタリア語』

「名前さんてイタリア語できるん?」

『出身が欧州の方だから、あのへんのはワリといける…ハズ』





「俺はな、祓魔師の資格得る為に本気で塾に勉強しに来たんや!!」





突然大きな声が教室に響き、声の主を見た。

と、すの勝呂の隣では燐が対立するように向かい合っていた。

喧嘩なのか?





「おまえみたいな意識の低いやつ…それに、名前も!!」

『っ、私?』

「塾も休み腐りやがって…目ざわりやから早よ出ていけ!!」

『………』


「な…何の権限でいってんだ、このトサカ!!俺だって、これでも一応目指してんだよ!」

『…私も、一応』



「お前が授業まともに受けとるとこも、名前が2日でも続けて塾来たとこ見たことないわ!」

「お、俺は実戦派なんだ!身体動かさないで覚えんの苦手なんだよ!」

『私には塾以外にも大切なことがあるの!!』






いつの間にか私も加わった喧嘩は更にヒートアップ。

席に戻ってからも勝呂が後ろからちょっかい出してくるのが鬱陶しくてしょうがない。





「今日の授業はここまで」





授業が終わる頃に、話を全く聞いていなかった事に気がついた。





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