ill wisher


□きっと誰もが嘲り笑う
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腐った動物の血の匂い……ハッキリ言うと、臭い。

それでも背筋を一瞬だけゾクリと何かが這ったような感覚に襲われた。


身体が、僅かに反応していた。

本能的にも思考的にも、危険だと。





『に、さまッ!!』

「これは…ふむ」

『随分呑気ですね、…』





途端に天井を突き破って小鬼がたくさん現れた。

魔障を受けて悪魔が見える塾生も、見えない塾生も一斉に慌て始める。





「悪魔!」

「え、どこ!?」

「そこ!!」




(止まれ、お前達――――)





意思の疎通を図ろうにも、ダメだ、完全に狂暴化している。

もう私の声は届かない。


巣に割り行ったのは人間なのに、勝手に興奮させられて、そして駆除されるのか。

なんとも理にかなわない道理だ。



銃を乱射して次々と小鬼を倒していく雪男を少し恨みながら、私も呼びかけ続けた。





「名前…限度の意味が分かるよな?」

『勿論ですわお兄様…“地震”は起こさないって云いつけですもの』

「………結構」





気付けば塾生は皆避難していて、もう教室には私、燐、雪男、そして兄様しかいなかった。

さてどうしようか。

燐はどうするんだろうか。





「話は終わってねー!!!

つーか俺のミスじゃねーし、俺のミスだしな!!…そこはゴメン」


「はぁ……僕にはあれ以上話すことはないよ」





そう話している最中でも小鬼はどんどん襲ってくる。

必死に声をかけるが、やはり無駄、だ。

そう悟った私は溜息を吐いてその場にへたり込んだ。





「とにかく今取り込み中だから、あとにして」

「そ、そんなことよりこっちのが大事だろ!!」

『燐、めっちゃ齧られてるよ』







「聞け!!」







そう燐が叫んだ瞬間、全身から吹きあがるように青い炎が現れた。

雪男が驚いた顔でその炎を見た。




嗚呼…

なんて綺麗なんだろう、この青き炎は。





「だいたい、ジジィが死んでから…お前とちゃんと話してなかったし…

ずっと知ってたんなら、お前はどう思ってたんだよ!俺のこと!!」


「…どう思ってる……?」





銃声は止まない。

まだ戦闘が続いている何よりの証拠だった。

流石と言わざる負えない手捌きで、雪男はどんどん小鬼を倒していく。





「決まってるだろ。…兄さんが悪魔でいる以上、危険対象だと思ってるさ」

「お前…!」

『雪男…言いすぎ…』




「バカだな、兄さん…なんで祓魔師になりたいなんて言いだしたんだ

復讐?

…それとも、神父さんへのせめてもの罪滅ぼしのつもりか?」





今更…と馬鹿にするように言った後、雪男は更に続けた。

相も変わらず、次々と鬼族は襲ってくる。





「…もし、本当にそう思ってるなら……、

大人しく騎士団本部に出頭するか…




いっそ、死んでくれ」






(きっと誰もが嘲り笑う)

(今更もう遅い、と)


110712

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