FT夢

□0.1
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あの人を裏切って、もうすぐ半年になる。

あたしはまだ―――罪を重ね続けていた。




『死にたくなかったらお金を置いてって』


「ハァ?ガキが1人で何言ってんだよ」

「テメェこそ、オレ等の金スろうとして…ただで帰れると思ってんのか?」




あたしを路地裏に連れ込んだ男3人は、あたしが今財布を盗もうとした相手。

生きる為には、お金がいる。

盗むことでもしないと―――まだ子供のあたしは生きられない。




「つかマジでちっせーな…もうちょい乳がありゃ、結構オレ好みな顔だぜ」

「オイオイ…こんな死人みたいな目ェした奴がいいとか趣味ワリー」

「バッカ、あの冷ややかな目がいいんだろ」

「お前マゾだったのかよっ!ウケんな」




あたしが深く被っていたコートのフードをパサリと払うと、男は片手であたしの顎をくいと持ち上げる。

思わず眉をひそめると、男達は「確かに綺麗な顔してるぜ」と言い、ゲラゲラと下品に笑う。

不愉快なその手に触れる事無く―――


あたしは電撃を頬から放った。




「ッ、ぐわっ!??」

「な、なんだよこの光…雷…!?」

「このガキ!!魔導士か!!!」


『……もう一度だけ言う。死にたくなかったらお金を―――――』








「こんな所に居たのか…探したぞ、まったく」

『!?』

「な…なんだテメェ!!」


「何って…コイツの父親だよ。な?」




な?と言われても。

私に父なんていないし、目の前の男は完全なる初対面だ。

まさか…あたしが絡まれてるとでも思って間に入ったのか?




「ホラ、今日はパパが悪かったって。夕飯は好きなの食わせてやっから、帰るぞ」

『…………』

「ま、待てよ!!そのガキはオレ等の金狙ったんだぞ!!?」


「未遂なんだろ?多目にみてくれよ。ちょっとご機嫌ナナメなんだ」

「ふざけんな!!こっちはケガまでして――――っが!??」




直後。

男はあたしが財布を盗もうとした奴(さっきあたしが電撃をお見舞いした奴だ)の胸倉を掴み、壁に押しつけた。

殺気―――とまではいかないが、怒りの念は少なからず感じる。

小さく呻くソイツに向け、




「勘違いするなよ。機嫌が悪いのはコイツじゃなくて…オレの方だ」




そう言って、腕の力を強める。

ただならぬ気迫にコクコクと頷く男は、解放されるとすぐに仲間二人と走り去って行った。




『……』

「さて、と。大丈夫かい?お嬢ちゃん」

『せっかく見つけた金ヅルだったのに。おじさんのせいで二週間ぶりの飯代を逃がしちゃったじゃん』

「え」




そう言ったあたしのお腹からはぐーと間抜けな音がする。

おなかへった。

育ち盛りに二週間の断食(してたワケじゃないけど)は少し苦行だ。


男はしばらく黙ってあたしを見ていたが、やがて手招きすると背を向けた。




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