FT夢

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「腹が減ってたまらん。貴様等の魂を喰わせてもらうぞ」




怪物は低い声音でそう言い放ち、その巨体であたし達を見下ろした。

見つ目のそれは、間違いなく呪歌に関わっているだろう。




「なにーっ!!!魂って食えるのかー!?」

「知るか!!!」

「一体…どうなってるの?何で笛から怪物が…」

『…ゼレフの魔法だね。怪物が呪歌そのものの、生きた魔法サ』


「生きた魔法…」

「ゼレフ!!?ゼレフって、あの大昔の!?」




黒魔導士ゼレフ。

魔法界の歴史上最も凶悪だったと謳われる魔導士…

魔法を覚えた者…魔導の道を行く者なら大抵最初に教えてもらうだろう。


その何百年も前に死んだ魔導士の負の遺産が、こんな時代に姿を現すなんて。




「さあて…どいつの魂から頂こうかな。

―――――決めたぞ」


よしグレイ行ってこい

「まだ何も言ってねェ!!つか、言われても行くかっ!!!」



「全員まとめてだ」



「いかん!!!呪歌じゃ!!!」

「ひーっ!!!」




何も言うでもなく、あたしはペロリと口角を舐めた。

同じタイミングで、グレイ、エルザ、ナツは怪物に向かって走り出す。


天輪の鎧へと換装を首尾よく行ったエルザが、真っ先に切り掛かる。

…このメンツなら、あたしが出張る必要はないだろう。




『“雷環投ヴルフロンド”…拘束ヴァージョン』




バチバチと音を放つ雷を指先に引っ掛け、くるくる回す。

徐々に、指の動きを大きくして。

やがてそれは、大きな輪に変わる。




「!?」

「なんだこの大きな輪は!?」




拘束ヴァージョンはそのまま、束縛の為の雷だ。

こんな巨体用を作るのは滅多な事だけど…

それをそのまま怪物に投げ、両腕を押さえた。




「ぬ」

『あとは頼んだ』

「おりゃぁああっ!!!」




怪物の脚をさかさかさかと登ったナツが、奴の顔面目がけて蹴りを噛ます。

普通の魔導士にはない、決定的な破壊力。

それこそがナツの…滅竜魔導士の力。


「小癪な!!!」先程の攻撃に腹を立てた怪物は口から何やら爆撃を射出した。

ナツはそれをひらりと避けるが、それは此方に一直線に飛んでくる。



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