FT夢
□05
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「こっちは妖精の尻尾最強チームよ。覚悟しなさい!!」
ルーシィがびしっと指を突き出し、そう告げる。
…貴方は何故一番後ろにいるのでしょうか。
『エルザは無理しなくていい。これくらいの人数ならあたし達で何とか出来る』
「そういうワケにはいかない」
魔導四輪車での魔力消耗を気遣っての発言だったが、彼女はそれを拒否。
此処までかなりの距離を彼女の魔力で進んで来たんだ、正直エルザ程の魔導士でなければ倒れていても不思議ではない。
断るあたりも、彼女らしいけれど…そんな事を言っている場合なのだろうか。
「後はまかせたぞ。オレは笛を吹きに行く」
『、』
「身のほど知らずの妖精どもに……鉄の森の…闇の力を思い知らせてやれぃ」
『逃がすか』
奴が浮遊する方向に手を翳し、そのまま放電する。
幾度か屈折を繰り返し、それはエリゴールの方向へと向かう、が。
奴の操った風で跳ね返えされる。
バチィと激しい音がして、電気は駅の壁に当たって傷を作った。
「逃げるのか!!エリゴール!!!」
『―――っ!!!』
プツンと何かが切れた音がした。
エリゴールが逃げたときに出来た窓の穴を睨んでから、意識を集中させた。
嫌な予感が、する。
「ナツ!!グレイ!!二人で奴を追うんだ」
エルザのその言葉を聞いてハッとする。
そうだ、エリゴールだけじゃない。
目の前には他にも的がいるんだ。
「「む」」
「おまえたち二人が力を合わせれば、エリゴールにだって負けるハズがない」
「「むむ…」」
「ここは私とアイリスとルーシィでなんとかする」
「なんとか…って、あの数を女子3人で?」
『最優先は呪歌を抑える事だよ。エリゴールを追って』
「聞いているのかっ!!!」
『聞いてるの?』
「「も…もちろん!!!」」
少しだけ声を低くして脅すようにそう告げると、二人は大人しく肩を組んで走って行った。
その姿が面白くて、思わず笑みが零れ、すぐにハッとして顔が熱くなる。
ギルドに帰ってからよく笑ってしまう…いけないな…。
「女三人で何ができるやら…それにしても、三人ともいい女だなァ」
「殺すにはおしいぜ」
「とっつかまえ売っちまおう」
「待て待て。妖精の脱衣ショーみてからだっ」
高笑いする男達の言葉に、落ちついていたのが一気に吹っ飛んだ。
下劣な言葉にイライラする。
頬からパチパチと放電すると、あたしの髪は愚か、すぐそばにいたエルザの髪でさえ浮き上がる。
「下劣な」
「かわいすぎるのも困りものね」
『一文の得にもならない事してやってるのに…これ以上は御免だよ』
軽く握った左手の平に電気を集め、それを指先に引っ掛け、くるくると回す。
徐々に形を造っていくそれは、やがて小さな輪のような形に変わった。
「これ以上、妖精の尻尾の名を侮辱してみろ。貴様等の明日は約束出来んぞ」
「剣が出てきた!!魔法剣!!!」
『あちゃー。エルザちゃんマジギレ』
「アイリスも…それ、何…!?」
同じようなモノを右手にも造り弄ぶように回していると、ルーシィが目を丸くしながら問う。
それに片目を閉じて返事をすると、エルザに顔を見せ、互いに頷いた。
と、エルザと同じように魔法剣を召喚した男達が此方に向かってくる。
『久々のエルザとの共闘だから暴れようと思うんだけど…
―――当たるなよ?』
「フッ――…当たり前だ」
誰が合図するでもなく、あたしと彼女は同時に、それでも逆方向に走り出す。
敵に回すと厄介なことこの上ないが…味方となると恐怖するほど頼もしいね、エルザちゃんは。
目にも止まらぬ速さで剣を振るうエルザ。
その度に美しい緋色の髪が風に靡く。
片手剣、槍、双剣、斧……
様々な武器を持ちかえ、百人斬りが宜しく敵を薙ぎ倒していく。
「こ…この女…なんて速さで“換装”するんだ!!?」
「換装?」
『魔法剣はルーシィの星霊と原理はほとんど同じだよ。
別空間にストックされてる武器を呼び出す、ってね。
その武器の入れ替えを“換装”って言うの』
納得とともにその凄さを実感しているらしいルーシィ。
でも、エルザの凄いのは此処からだ。
換装の速さも剣術も、しなやかな動きも凌駕する。
圧倒的な、
「まだこんなにいるのか…
面倒だ、一掃する」
圧倒的な、強さ。
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