FT夢

□04
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列車には通信機が備わっているらしいが、一般客に貸してはいないらしい。

困ったな。

一体どうやってエルザに連絡しようか?




(一度ナツの所に戻ろうか)




そう思い、ナツのいる車両まで移動する。

彼の様子も心配だが、さっきから嫌な予感がするのが気になる。




『ごめんねナツ、連絡出来ないから次の駅で乗り換え―――』




カンカンカンカン―――!!




車両の扉を開けながらそう言うと同時に、聞き覚えのある甲高い音が響く。

この音は列車の停止の音…

窓から見える電灯には灯りが灯っている。




『緊急停止…!?』

「うわっ!!!何だよ!!急停車か!!?」

『!?(誰……?)』




ナツ以外の声が聞こえ、思わず驚く。

列車の車輪が悲鳴を上げる中、列車はゆっくりと速度を落とし、やがて、止まった。




『…ナツ?』

「! アイリス…」




列車が止まったことに安堵するナツの傍に駆け寄り、揺れて倒れた身体を起こした。

あたしからすぐに離れると、ナツは目の前の男を睨んだ。

と、その視線はすぐに男の鞄の中に向けられた。


つられてあたしも見ると、そこには不気味に笑う、三つ目の髑髏の笛が転がり出していた。




「み…みたな!!」

『…笛?』

「うるせェ…さっきはよくもやってくれたな」


「え!?」

「お返しだ!!!!」




炎を纏ったナツの拳が、男の顔面に叩き込まれる。

話の筋は見えないが、どうやら彼は男に何かをされたらしい。

3度床にぶつかり、果ては壁まで吹っ飛ばされた男は、




「ハエパンチ!!」

「て……てめえ〜…」




腕を上げるナツを強く睨んだ。

そのナツの背を唖然としたまま見つめていると、車内のアナウンスが話し始める。




≪先ほどの急停車は、誤報によるものと確認できました。間もなく発車します≫

『む』

≪大変御迷惑をおかけしました≫

「マズ…」

『走り出す前に此処で降りちゃおう、ナツ』

「おう!!逃げよ!!!」


「逃がすかぁっ!!!鉄の森に手ェ出したんだ!!!ただで済むとは思うなよっ!!!妖精ハエがぁっ!!!」




男は流れた鼻血を拭いながら声を荒げた。

その男に対し、ナツも額に青筋を受けべて対抗した。




「こっちもてめェの顔覚えたぞっ!!!さんざん妖精の尻尾バカにしやがって」

『ナツ、急いで』

「今度は外で勝負してやぼる…うぷ」

『言わんこっちゃない』




まだ僅かしかとは言え確実に動き出した列車の揺れに反応し、ナツが汗を流し始める。

背中をさすさすと擦って顔を見上げると、彼はニッと笑って、


あたしの腰を抱え、そのまま肩に担ぎあげた。




『うひゃっ、ちょぉっ…ナツ!?』

「とう!!!」




動き出した列車の窓から、ナツは勢いよく飛び出した。

硝子の破片が、肩を掠める。

痛みに目を僅かに細め、そのまま風圧で後ろに流れていく。




「おわああああ」

『うわっ…!?』




「―――アイリス!!!」




声がして、凄い風の中顔を上げる。

そこには見慣れた仲間の姿があった。




「ナツ…アイリス!!?」

「何で列車から飛んでくるんだよォ!!!」

「どーなってんのよ!!!」

「うぉあっ」


『くっ…!!』




意識を集中して、額から微弱な静電気を流す。

列車に送り込み磁場をつくると、そのまま一直線に列車へ引きつけられ、




ゴチ ン ――― !!!




鈍い音がした。

身体に衝撃が走り、思わず力を止めてしまう。

と、そのまま重力に逆らうこともなく落下した。


列車の上にいたグレイと、ナツが額同士をぶつけたらしい。




「ナツ、アイリス!!!無事だったか!!?」

「痛――っ!!!何しやがるっ!!!ナツてめえっ!!!」

「今のショックで記憶喪失になっちまった!!誰だ、オメェ。くせぇ」

「何ィ!!?」

「ナツー、アイリスー。ごめんねー」

「ハッピー!!エルザ!!ルーシィ!!ひでぇぞ!!!オレ達をおいてくなよっ!!!」


「すまない」

「ごめん」

「おい…随分都合のいい記憶喪失だな…って―――アイリス?」


『………』




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