FT夢

□03
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シュポーっと間抜けな音を立てて走る列車。

窓の景色は面白い程の早いスピードで流れているというのに。




「はぁ…はぁ…はぁはぁ…」

「なっさけねえなぁ、ナツはよォ……」

『相変わらずで安心したよ。二年経っても乗り物は克服できなかったんだ?』



ぐてぇぇと座席に寄りかかるナツ。

失礼ながら、ナツの一番ナツらしいと思うところだ、この乗り物酔いは。




「うっとおしいから、別の席行けよ…。つーか列車乗るな!!走れ!!」

『んな無茶な』

「まいどの事だけど…つらそうね…」




酷いことをいいつつも、グレイも心の底では心配してる、ハズ。

窓の前の小さな荷物置きに腰かけていた私も上機嫌で窓の外を眺めていた。




「まったく…しょうがないな、私の隣に来い」

「あい…」

「どけってことかしら……」


『ていうかグレイ、さっきから何?あたしの事ちらちら見るけど』

「え?あ、あァ…(窓開いてるから風でスカートめくれてんだよ…ッ!!)」




曖昧な回答をするグレイに溜息をついて、風で靡いた髪を抑えた。

ナツとルーシィが入れ替わり、エルザの隣に座ったナツ。

相変わらずつらそうに息を吐く彼の腹部に、エルザの鉄拳が入った。


この間いきなり膝蹴りを入れた身のあたしが言えることじゃないが、痛そうだ。

気絶し自分の膝に倒れ込むナツを見て、




「少しは楽になるだろう」

『流石』

「「「……」」」




顔面蒼白なグレイ、ルーシィ、ハッピー。

話題を変えようとしたのか、ルーシィが少し明るく話し出す。




「そういや…あたし…妖精の尻尾で、ナツ以外の魔法見た事ないかも」

『あれ、あたし見せたことなかったっけ』

「うん…多分。エルザさんはどんな魔法使うんですか?」

「エルザでいい」


「エルザの魔法はキレイだよ。血がいっぱいでるんだ」

『…相手の』

「キレイなの?それ」


「たいした事はない…私はグレイの魔法のほうが綺麗だと思うぞ」

「そうか?」

『あ、それは同感。グレイの魔法はあたしも結構すき』

「っ、」




それだけのことに照れたのか、グレイは少し顔を赤くしながら魔法を発動させた。

手の平に現れる、ギルドマークを模った氷。

ルーシィが声を上げて感嘆した。




「氷の魔法さ」

「氷って、アンタ似合わないわね」

『やっぱりそう思う?似合わないよね?』

「ほっとけっての…そういうお前も、似合ってねえし」




『えー…そうかなあ?』




パリッと小さな音をたてて、頬から僅かに放電する。

ルーシィはきょとんとした目であたしを見た。




「電気?」

『そうそう。雷とか電流とか…ビリビリする魔法使うの、あたし』

「似合わねえよな?」

「そんなことはない。アイリスらしい魔法だと思うぞ」




エルザがそう言ってくれた。

…あたしらしい?

自分らしさはよく分からないが、なんだか嬉しい。


思わず笑ってしまって、慌てて顔を背けた。




「……」

『、うわっ!?』




後ろ手に腕を引かれ、バランスを崩して落ちる。

すとんと収まったのはグレイの膝の上。

どうやら彼が私を引っ張ったらしい。




『な、ちょっ……』

「やっぱり笑う時は逃げるのかよ」

『は?』

「……なんでもねェ」




意味の分からないことを言われ、思わず怪訝な顔をしてしまう。

結局何も言わないので離れようとするも、がっちりと身体に手を回され動けない。

頑張ってみたが無理そうなので、諦めた。


と、何やら難しそうな顔をしていたルーシィが唐突に声を出した。




「氷!」

『うん?』

「火!―――あ!!!!」

『どうしたのルーシィ?』


「だからアンタたち仲悪いのね!!!単純すぎてかわいー」

「そうだったのか?」

「………」


『真相は?』

「どうでもいいだろ!?そんな事ァ(アイリス取り合ってるなんて本人の前で言えるかっ!!!)

つーか、そろそろ本題に入ろうぜエルザ。一体何事なんだ」




そうだ、すっかり忘れていた。

完全に遠足気分の会話をしていた為、本来の目的を忘れかけていた。

あたし達はエルザに頼まれ此処にいるんだった。

しかも、彼女程の人が力を借りたいだなんてよっぽどだ。




「そうだな…話しておこう。




先の仕事の帰りだ。

オニバスで魔導士が集まる酒場へ寄った時、少々気になる連中がいてな…」


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