FT夢
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『や、ルーシィ』
「…え、うそ…アイリス?」
『お迎えに上がりましたよ、お嬢様』
「もう…やめてよ」
くす、と小さく笑う彼女にごめんねとあたしも笑った。
「このお花、アイリスが?」彼女の指差すほうにある花を一瞥してから、あたしは頷いた。
『ごめん。花なんてどんなのがいいのかイマイチ分かんなくてサ』
「ううん…とっても綺麗よ。ありがとう」
私の置いた花束のそばに、ルーシィは自分の胸に抱えていた花束を置いた。
控えめな色の花がついたそれのほうが強く見えて、あたしは好きだと思った。
「どうしてここに?」
『お前のお父様をサ』
「?」
『ぶん殴りに来た』
「え」
『つもりだったけど…もう、やめた』
「えっ、と…どうして?」
『ぜーんぶ、ルーシィちゃんがひとりで言えたから』
ぽかんとする彼女の頭をなでなでする。
柔らかい髪を指に通したりしていると、小さくやめてよと抵抗されたので、おとなしく離して表情を伺った。
「そ、そっか…聴かれてたのね」って真っ赤になってて、素直にかわいいと思った。いつも可愛いけど。
『気分いい?』
「えぇ。満足よ」
『それはよかったヨ。…あ』
苦い顔をしてしまったあたしを不思議そうにみてから、ルーシィもあたしの見ている方向へと目をやる。
そこにはナツ、グレイ、エルザ、ハッピーの姿があり、ルーシィの名前を呼びながらものすごい勢いで走ってきていた。
あまりの勢いにルーシィも驚いて素っ頓狂な声をあげたところで、彼女の胸にハッピーが墜落。
慌ててきたナツが彼女に早口で問い詰め、彼女はそれを否定して。
勘違いだったのか、三人と一匹は一気に脱力していた。
よく、分からないけど。
みんな楽しそうだ。
そこに近づこうとして、あたしは伸ばした手を止めた。
「まさか、"自分の居場所は此処だ"なんて思ってるのかイ?」
「滑稽ダネ。無様ダネ。醜いネ」
あたしは――汚い。
きらきらと笑う皆の姿を、一歩下がって見つめて。
安堵とも悲しみとも違う、息を漏らした。
「母ちゃんの墓参り!!?」
「そ」
「え…ルーシィのお母さんて…」
「ハッピー黙ってろ」
「みんな…心配かけてごめんね」
「結局取とりこし苦労だった訳か…」
「てか、服…」
『ルーシィが謝ることないサ、勘違いしたのはみんなだし』
「つか、アイリスはなんでいたんだよ」
『墓参り』
「うそくせえ」
『よし、グレイ。かかってきなよ、二分でシメたげる』
「上等だコラ」
「オレも混ぜろー!!!」
「やめないか三人とも!!」
「「『は、はい!!!!』」」
「それにしてもデケー街だな」
「あ…ううん、ここは庭だよ。
あの山の向こうまでがあたしん家。
あれ?どーしたのみんな…」
「お嬢様キター!」
「さり気自慢キター!」
『やばい思ったより凄い金と感覚!!』
「ナツとグレイとアイリスがやられました!!!
エルザ隊長一言お願いします!!!」
「空が…青いな…」
「エルザ隊長が故障したぞー!!!」
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