独楽駄文(短編)

□ネオボーグ・メモリー
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カイが熱を出した。
慣れない地で無理な訓練をしていたのだから、当然の結果だろう。
体調管理もブレーダーの大事な義務なのだが。

「ほどほどにしろと、口うるさく言ってきたつもりだが?」
朝、いつもの時間になっても起きて来ないので見に行ってみたら、ベッドでぐったりしているカイがいた。

慣れないくせに、環境に適応している俺達よりハードな練習をするからだ!
言わんこっちゃない!
これからは俺の言うことに従うんだな。
フハハハハ!

心の中でそう叫びながら、せっせとカイの看病をする俺・・・・・・。

濡れタオルを額に乗せようとする手を、煩わしそうに払いのけられた。
ほっといてくれ、と言わんばかりに寝返りをうつ。

こいつ・・・。

肩を掴んで、無理やり仰向けにさせると、ぺしり、と少々乱暴にタオルを乗せた。

「さっさと治せ。せっかくネオボーグに招いたんだ。お前には勝ってもらわなければ困る」

それだけ言い残して部屋を出た。

疲れが出ただけだ。
まあ、今日一日大人しく寝ていれば良くなるだろう。


昼になって、日本で病人食につくられるらしい、粥と言うものを作ってみた。
これなら食欲がなくても食えるだろう。


「カイ、入るぞ」
ノックしても返事がないので、声をかけてから入った。
「な、に・・・!?」
部屋はもぬけの殻だった。
トイレかと思ったが、脱ぎ捨ててある寝間着が、そうではないことを示している。
まさか、トレーニングでもしているのか?
馬鹿な!

「全く、世話の焼ける・・・!」

軽く舌打ちをして、俺は部屋を飛び出した。


カイは修道院の庭にいた。

「いい加減にしろ!」
覚束ない足取りで、どこかへ向かおうとしているところを、腕を掴んで引き止める。
俺を振り払おうとする、その腕には大した力はなかった。
「離せ!!」
「カイ・・・っ」
「俺は、俺はこんなことで立ち止まる訳にはいかないんだ・・・!」
あの男に勝つために・・・。

本当に一途な奴だ。
そういうところは嫌いではない。
だが・・・、何故だろう。胸の奥でドロドロとしたいやな感情が渦を巻く。激しく、暴力的なそれを抑えつけるようにして、努めて冷静に振る舞う。
「だったら尚更休め。その体でトレーニングしたところで、時間の無駄だ。何を焦っている」
落ち着かせるように、抱きしめて背中を叩く。
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