独楽駄文(長編)
□4.泡沫の君
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火渡カイとバトルしてから、はやくも一年が経過しようとしていた。
「早いものだ…」
俺は港でカイを持っていた。
この度行われる世界選手権では、各チームでタッグを組んでバトルをするというのがルールの一つだ。
正直言って、今回俺はなんとしても優勝したい。
ヴォルコフの計画を阻むために。
二度と俺たちと同じような目にあう人間をつくらないために。
そのために、手段は選ばない。
そう、BBAから火渡カイを引き抜いてでも・・・。
1ヶ月前・・・。
「火渡カイをネオボーグに入れる!?」
修道院の談話室にボリスの声が響いた。
一緒にいるセルゲイとイワンも固まっている。
「そうだ。奴は世界チャンピオンの木ノ宮と同等、あるいはそれ以上の実力を持っている。勝つために手段を選んでいるときではない。今度の大会は俺と奴が組む!」
「でも・・・、ユーリ、・・・奴が俺たちの誘いに乗るのか?」
戸惑ったようにボリスがたずねてきた。他の二人も頷いている。
「無理な話ではない。奴は木ノ宮のライバルだ。こちらに来れば木ノ宮とバトルができる。カイなら、木ノ宮とタッグを組むより、戦うほうを選ぶはずだ…」
談話室に沈黙が流れる。
最初に口を開いたのはイワンだ。
「気に入らないぜ」
瞳を真っ直ぐ見て主張する。
メンバーが俺に対して、己の意見をはっきり述べるようになったのは、最近のことだ。
「火渡が強いのは認めてる。だけど、本当に俺たちより強いか分かったもんじゃねえ!俺たちはロシアで代表を守り続けたんだぜ」
ボリスやセルゲイも黙って俺を見た。
「一理あるな。では、俺たちとカイがバトルをして、勝ち残った四人が改めてネオボーグのメンバーになるというのはどうだ?」
全員が息をのんだ。
このメンバーから外される者がいるかもしれないからだ。
リーダーとしての実力を有する俺はともかく、他の三人の力は均衡している。
誰が生き残れるかわからない。
「つまり、俺たちが火渡に勝てばいいんだな」
ボリスが噛みしめるように呟いた。
「俺たちらしいやり方だな…」
セルゲイも納得し、イワンも頷いた。
それでいい。
このやり方なら、チームを納得させられるだけでなく、ロシア代表として日本人であるカイを招くことに対する国民の反感も、少しは和らぐかもしれない。
ヴォルコフが去ってからは、修道院はネオボーグのファンからの寄付金や、国の支援金で成り立っている。