Series『桜〜羅刹〜』

□終
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山南敬助と葛木桜華が新選組を離れ、綱道の残した資料を基に、仙台の近くにある隠れ里に辿り着いた。
そこに数家の廃屋があり、その中には綱道が研究していた時に使っていた家も見つかる。
その家には、いくつか書き付けのような物も残っており、そこにはやはりこの土地の水を使い、変若水の毒を薄め、それに成功したことが書いてあった。
二人はその家を住居と決め、綱道の残した資料を整理処分しつつ、生活を整えていく。


其れから、半年が経った明治2年5月ー・・・
この地に二人が移ってから、体に少しずつ変化が現れ始める。
血への衝動も起こらなくなり、昼間起きている事に苦を感じなくなってきた。

『賭のようなものです。』

といっていたが、山南はその賭にかったのだ。
そんなある日の良く晴れた昼下がりに、刀を振るう音が聞こえる。

「桜華・・・」

山南が少し声を低くして、厭きれた様子で名前を呼んだ。
桜華は、罰が悪そうに、振り向く。

「あ、山南さん。」

男装した桜華が、刀を持って素振りをしていた。

「何をしているのですか?」

「えっとぉ、素振りです。」

「それはわかってます。
何故、素振りをしているのですか?と聞いているのです。」

「・・・」

山南の笑みを称えてはいるが、少し怒ったような感情が見える雰囲気に呑まれ、桜華は何も言えず少し俯く。

「確か昼を食べて直ぐに町へ買い物があるからと、男装して出て行ったのは知っています。」

町に行くときは、道なき道を行くために、動きやすいように男装して桜華は行くことにしている。

「ですが、帰ってきたと思っていたら、そうやって素振りをして、何か、あったのですか?」

「・・・」

押し黙る桜華に近づき、まだ手に持っている抜身の刀を取り、桜華が腰に差している鞘に納める。

「言ったでしょう?
貴女にもう刀を振るわせるつもりはないと。」

「山南さん・・・」

愁いに満ちた目で見上げる桜華に、そっと頬に触れる。

「あったのですね?
話してください。」

「函館が・・・落ちたそうです。」

「そうですか・・・」

「町での噂ですが、間違いなさそうです。
ただ、新選組がどうなったかまでは・・・」

桜華の瞳に揺れた。

「我慢する必要はありませんよ。」

「いえ・・・
 まだ、決まったわけじゃないですし・・・信じます。」

「そうですね。
彼らの事ですからね。」

そう言って、山南は北に向かって遠い目を向ける。

「山南さん、もしかして・・・後悔していますか?」

「そういう貴女はどうなのですか?」

「新選組を離れたことに、後悔はありません。
ただ・・・」

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