Series『現桜』

□The 14th.「勧誘」
1ページ/5ページ



入学式が終わって1週間が経った。
いよいよ始まる・・・決戦が・・・

新入生への部勧誘。

去年は女生徒が入学せず、途中転校してきた葛木桜華は勧誘する前にあっさりと剣道部へ入部してしまい、皆苦汁を飲んだ。
今年は…雪村千鶴…が居る。
どの部活も彼女を入部させようと躍起になっていたのだが・・・


「へ、平助君・・・ハァハァ」

「大丈夫か?千鶴?」

「うん、大丈夫。
 平助君こそ・・・」

「俺は平気さ。」

藤堂平助と千鶴は、波がくるように千鶴へ向かってくる数々の勧誘を振り切り、目的の場所へ向かっていた。

「千鶴、ほんとにいいのか?」

「うん、もう決めたから。」

「よし、行こう。」


部の勧誘活動は学園長の号令の元、入学式が終わった1週間後に始まる。
この時期は通常の部活動もそっちのけで、校舎から校門までの間を各部が一人でも多く新入生を捕まえようと、部の勧誘・受付が並んでいた。

「おーい!平助!」

勧誘の為、剣道着に竹刀を肩に担いで立っていた桜華は、平助と千鶴を見つけ声をかけた。

「やっと来たか。
 あれ?千鶴ちゃんも?」

「桜華先輩!」

「少しはここにも慣れた?」

「はい。」

「そかそか。」

「あれー?平助はともかく千鶴ちゃんも来たんだ?」

そこに現れたのは、2年1組 沖田総司である。
平助は「俺はともかくってどういう意味だ!」と言うが、サラリと無視。

「あ、沖田先輩。」

「あれ、総司?千鶴ちゃん知ってるの?」

「うん。中学の途中まで、近藤さんの所で小太刀を習ってたんだよ。」

「へぇ〜そうなんだ。
 でも・・・」

「うん、もう今はあまり小太刀習う人も居ないからね、今は教えてないんだよ。」

「なるほど。
 で・・・平助はともかく・・・千鶴ちゃん、何故ここに?
 小太刀はやってないし、ここの剣道部はかなり荒いから女の子にはお勧めしないよ?」

(相変わらず自分が女という自覚が薄い)桜華は千鶴に向かい疑問を投げかける。
勿論、平助の「桜華までその言いぐさは!」と文句をいうが、やはり無視された。

「あ・・・あの・・・」

「ん?」

桜華は首を傾けて、自分より少し背の低い千鶴の顔を覗き込む。
目の前にある桜華の顔を見て、真っ赤になりつつも千鶴は答えた。

「あのですね、マネージャーに・・・」

「え?」

「ですから、マネージャー・・・」

「へ?」

きょとんとした顔で桜華は千鶴を見つめる。

「桜華ちゃん・・・」

クスクスと笑いながら、沖田は声をかけた。

「あ・・・あぁ・・・えっと、本気?」

「はい!」

「だから、俺、必死になって千鶴をここにつれて来たんだぜ。」

平助も千鶴の言葉に続く。
桜華は一瞬、目を見開く表情をしたが、直ぐに笑顔になり千鶴を抱きしめる。

「うれしいな〜千鶴ちゃん。」

「桜華先輩!」

「いや〜もうこの男共ときたら・・・ほんとに、だらしなくて。
 マネージャーなんて、超助かるよ!」

千鶴が桜華の腕の中でアタフタしていると、それを見て笑い続けながら沖田が声をかけた。

「桜華ちゃん、千鶴ちゃんが困ってるよ。」

「あぁ、ごめん!」

沖田の言葉に慌てて手を放す。

「い、いえ・・・」

「じゃ、早速、新マネージャーを皆に紹介しないとね♪」

そう言って、桜華は千鶴の肩を抱き、勧誘をしている部員達の所へ連れて行った。
それに従う様な形で沖田も付いて行く。
そして、藤堂が・・・

「お、俺を無視すんな〜!」

と叫びながら後を追いかけたとか。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ