Series『現桜』
□The 13th.「入学〜後編〜」
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葛木桜華は山南敬助と別れた後、校舎に入り職員室へ向かった。
「失礼します。」
桜華が職員室に入ると、まだ何人か教師達が残っている。
「もう間もなく式が始まりますので、体育館へ向かって下さい。」
「おぉ、もうそんな時間か。」
そう言って近づいて来たのは、普段は緑ジャージがトレードマークの数学教師 永倉新八であるが、この日は・・・
「わ、スーツだ。
持ってたんですねぇ、スーツ。」
「いや、これ・・・土方さんの。」
「はい?」
「クックック、こいつ、こないだの卒業式の時に久し振りにスーツ着ようとしたら、カビだらけで着れなかったんだとさ。」
そこに、ホス・・・もとい体育教師 原田左之助もやってきた。
「あー、そういえば、卒業式の時にジャージでしたねぇ。」
あんまり違和感無くて、気にとめてなかったが、よく考えたら卒業式にジャージは確かに拙いよなと改めて思う桜華。
「あの後、土方さんにこっぴどく叱られて、スーツ買えと言われてたんだが、金がな・・・
んで、仕方なく土方さんから、借りたんだと。」
苦笑しつつ、ちらりと原田は永倉をみる。
「左之!余計な事を!」
永倉が抗議するが、桜華は納得した表情で。
「あー、競馬でスってお金無かったんですね。」
「桜華ちゃん・・・」
ショボクレた様子で永倉は桜華の名前を呼ぶが・・・
「事実だろ。」
原田が空かさずツッコむ。
その会話に桜華はたまらず笑っていると、独特の口調で話すあの方が。
「こんな所で油売っている場合ではなくて?」
音楽教師の伊東甲子太郎である。
「あぁ、伊東先生。
今日は、伴奏宜しくお願いいたします。」
桜華は慌てて頭を下げる。
「精一杯、心を込めて引かせていただきますわ。
それよりも貴方、今日は司会進行もやるのでしょう?
そろそろ行かなくてよろしいのかしら?」
「あぁ、そうだった!
それじゃ、失礼します。」
慌てて職員室を飛び出す桜華。
「さ、私達も参りましょうか?」
「「あぁ。」」
伊東の雰囲気に呑まれ、生返事をする二人。
三人も桜華の後に続き、職員室を出て行った。
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