Series『現桜』

□The 8st.「ままごと」
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山南敬助が道場から中庭に目を向けると、葛木桜華が近藤勇の娘のたまと遊んでいる。
先週、約束した事をきちんと守り、昼過ぎ頃やってきて、それからずっと中庭でたまと遊んでいるのだ。
たまと遊ぶ桜華の穏やかな笑顔を見て、

『貴女のそんな表情は久しぶりに見ました。』

前世で出会った頃は、まだそういう表情をしていた気がする。
だが・・・自分が変若水を飲み羅刹となってからは、どんな表情でも翳りが見えていた。
そして、仙台で最後に自分が死ぬ間際に見た顔を思い出すと、山南は胸が締め付けられる・・・

『いつまでも貴女には、その笑顔で居て欲しい。』

山南は、愛おしげに見つめながら、密かに願うのであった。
そして・・・その山南の様子を見ている者が居る。

『たっくぅ、あんな表情で見やがって。』

土方歳三だ。
いつもは夜の部から参加なのだが、先週、桜華が早く来ると聞き、様子が見たい為、近藤と示し合わせて用事があるからと昼頃から来ていた。

『普段は何考えているか、わからねぇのに、あいつの事になるとバレバレだな。』

前世の時から(黒い)微笑を称えながら、まったく自分の事を気取られせなかった山南だったが、桜華の事に関しては別である。
土方や沖田総司、原田左之助など勘の良い者は気が付いており、事ある毎に二人を心配をしていた。
(それでも、殆どの隊士が知らなかった訳だから、まったく隠せていなかった訳ではない。)
だが、今生では・・・

『あれじゃ、勘の鈍い奴らも気が付いちまうぞ。』

そのほうがいいかと土方は、山南の様子を見ながら、少し彼の人間味ある所が見れた気がして安心したような気持ちになった。

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