Series『現桜』

□The 2st.「初日」
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葛木桜華が初めて登校する前日のことである。

「副長、お呼びでしょうか。」

鋭い目つき・・・キツネ目の男―山崎丞は、土方歳三のいる古文教科準備室を訪れてた。

「もう副長はやめろと何度も言っただろう。」

「いえ、俺にとっては、副長は副長ですから・・・
 それにこうして秘密裏に呼んだということは、何かご命令があるということでしょう。」

「あぁ、お前に頼みたいことがあってな。」

「どのような内容でしょうか?」

「葛木桜華を覚えているか?」

「はい。勿論です。」

桜華と山崎は同じ監察として、仕事をしていた仲である。
そして、山崎は桜華と仕事を共に行っていく内に、心惹かれていた。

「今度、その桜華がこの学園に転入してくる。」

「え・・・」

山崎の細い目が見開かれる。

「ほ、本当ですか?」

「あぁ、写真を見ただけだが・・・間違いない、あれは葛木桜華だ。
 そこで、お前に頼みたいことがある・・・」

「はい、なんでしょう。」

「俺の権限でお前と同じクラスになるようにする。
 だから、あいつの様子を俺に知らせてほしい。」

「それ・・・だけですか?」

土方が話しにくいであろう内容があることを、予想して話を促す。

「御見通しか・・・山南さんのことだ。
 できれば、桜華となんとかしてやりたいが、こればっかりはお互いの気持ちだからな。
 その為にも桜華の状況が知りたい・・・まずは記憶があるかどうかだが。」

「わかりました・・・
 それを踏まえて、行動するようにいたします。」

「すまねぇ・・・お前も・・・」

土方は頭を下げる。

「副長・・・頭を上げてください。
 俺は最初から諦めてます。
 葛木君は、ずっと総長しか見てなかったですし・・・」

「ほんとにすまない・・・」

「もし、彼女が今生に転生していたら、今度こそ幸せになってほしいと思っていたんですよ、俺は・・・」

自分が死んでしまった後、桜華の状況を聞いた山崎は、あの時、人として死を選んだことに後悔をしていた。
もし・・・生きていれば・・・なんとかできたかもしれないと。

「あぁ、俺としても、あいつには幸せになって欲しい・・・
 だから、頼むぞ、山崎」

「はい、しかと・・・」


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