Series『現桜』

□The 19th.「捻挫(4)」
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桜華が捻挫をして10日程経った時の事である。
松葉杖も、近藤家での生活も慣れた頃ー…
あれから主治医?は、(何故か)そのまま赤羽が担当し、あと数日で松葉杖も片手になるだろうと言われてたのだが・・・
いつも(捻挫した時から)だったら、桜華は沖田に頼んで飲み物を買うのだが、沖田が(やっぱり)いつものごとく教頭の土方に呼び出されてしまったので、仕方なく?自分で買いに来てた時の事である。

「よぉ。」

そこに現れたのは、生徒会役員 不知火匡だった。

「やぁ。」

いつもの様に目を合わさず返事をする桜華。

「怪我したんだってな。」

「見れば分かるでしょ?」

「だから言ってるじゃねぇか。
 女なんだから、ちったぁ考えろって。」

一向に目を合わせない桜華に気にせず、話しかける不知火。

「余計なお世話。
 そんな事より今日は、こんな状態だからあんたの相手をするつもりはないよ。」

不知火はそう言って場を離れようとする桜華の前に立ち邪魔をする。
そこで初めて不知火を見る。

「邪魔なんだけど?」

「あぁ、邪魔してるからな。」

「今日は相手をするつもりないと言ったはずだけど?」

「あぁ、言ったな。」

「だったら、退いて。」

「やだね。」

二人の間に緊張が走る。
桜華は不知火を避けて通ろうとすると…
不知火は桜華を壁に寄せて、両腕で囲う様に壁に手を付けて閉じ込めた。

「何よ?」

桜華の声が一層下がる。
それに対し不知火は不敵な笑みを浮かべた。

「チャンスなんだよ、俺様にとってはな。」

桜華はその言葉を聞いて、大きな溜息を吐いた。

「葛木、俺の女になれ。」

「嫌。」

「そんな事、言える状況と思うか?」

そう言いながら、不知火は桜華に顔を近付けようとした時…

どすっ

桜華の膝が不知火の腹に入った。
油断していた不知火は、威力はなかったものの、「ぐっ」と呻いてよろめく。
不知火が少し離れたのを見逃さず、桜華はすかさず不知火の頭に向かって、蹴りを放った。

捻挫していた足で。

蹴りはヒットしたものの、桜華も足を押えて座り込んだ。
そんな足で蹴った為か、不知火は直ぐに回復し立ち上がり、そして桜華の様子を見て怒鳴った。

「馬鹿やろう!何やってやがる!」

足を押えながら桜華は・・・

「煩い。」

そう呟くと松葉杖を手元に引き寄せ、立ち上がろうとした時、不知火が桜華を抱き上げた。

「何する!」

「煩せぇ、足が痛えんだろ。」

桜華を抱き上げたまま不知火は駆け出した。

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