Series『現桜』
□番外編The 2th.「再会」
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「それでは、久しぶりの再会を祝して・・・」
「えぇ、無事な再会を祝して・・・」
「「乾杯」」
薄桜学園保険医兼事務長である山南敬助は、先日2年の葛木桜華が捻挫したので検査の為に訪れた大学病院で、学生時代の友人 赤羽蔵人と再会した。
赤羽は医師として独り立ちしたあと、優秀な外科医であったが大学内での約束された出世への道を蹴り、NGOの非営利団体に属し戦闘地域へ医療活動を行う為、日本を離れていた。
だが、赤羽が派遣されて居た地域の戦闘が激しくなり、2次被害を防ぐ為、日本へ戻ってきたのである。
「しかし、ああいう状況で再会するとは思っても居ませんでしたよ、赤羽先生。」
「申し訳ありません。
少々前に戻ってきていたのですが、中々落ち着かなくて。」
「いいえ、お忙しかったのでしょう。
こうして無事に帰ってくださったのですから、問題有りませんよ。」
「ありがとうございます。
山南先生もお変わり無く?」
「えぇ、こちらは何も変わりありませんよ。」
赤羽は山南の言葉に、意味ありげな笑みを浮かべた。
それに気がついた山南が声をかける。
「何か?」
「いえ、君は少し変わった気がしますがね。」
赤羽の言葉に怪訝な表情を浮かべる山南。
「クス、そんな顔をしないでくださいよ。」
「別にいつも通りです。」
山南の少し不機嫌そうな様子に、赤羽は喉で苦笑をする。
「一体、何が仰りたいのですか、赤羽先生。」
「だから、君のそんな様子は初めて見ましたよ。
いつも冷静で何を言われても眉一つ動かさなかった君が、だいぶ感情豊かに表へ出る様になりましたね。」
「いけませんか?」
「別に悪い意味で言っている訳ではありませんよ。
良かったと思っています。」
「赤羽先生・・・」
「あの少女の影響ですか?」
「い、一体何を!」
珍しく声を荒げる山南に対し、何とも楽しそうな赤羽。
山南と赤羽は学生時代からウマが合うのだが、赤羽のこう言う所は苦手意識を持っている。
「落ち着いて下さい、山南先生。」
「赤羽先生、からかうのはやめて下さい。」
「別にからかっている訳ではありませんよ。
思った事を述べているだけです。」
「別に彼女は、学園の一生徒でそれ以上の関係はありません。」
山南は機嫌悪そうに、手に持っていたグラスを傾ける。
「そうは見えませんでしたよ。」
「・・・」
「まぁ、もし君がそう言うのであれば・・・」
「事実ですから。」
赤羽の言葉の途中で、山南は語句を強めて否定をする。
だが、一層笑みを浮かべ赤羽は・・・
「なら、私が彼女を貰っても問題ないですね。」
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