Series『桜』

□入隊
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藤堂は、とある道場に来ていた。


新選組の人手不足も甚だしく、その上、浪士組時代の悪評もあり、なかなか人材が集まらなかった。
だから、周辺の道場にめぼしい人材を勧誘する為に組長クラスが回っていた。
この日は、藤堂平助が担当として、道場めぐりをしていた時のこと・・・。



今回、藤堂が訪れた道場は、全体のレベルもソコソコ高かった。
が、その中で一際群を抜いていた者が居た。

身長は自分より少し小さめだが、年齢は自分と同じぐらいのようだ。
体は細く、力はあまりなさそうだが、それをカバーするスピードと的確な動きで周りを圧倒していた。

『あれは、相当な腕前はありそうだな。』

藤堂は、立ち会ってみたくなり、道場の師範に相談をしたら、割とあっさり承諾された。
立ち会いの際、藤堂には防具が無かったので、道場で貸すと言われたがそれは断った。
そしたら、相手も防具を脱ぎだした。

「おいおい、あんたまで脱ぐことはないんだぜ。」

「対等じゃなければ、意味がありませんから。」

『結構、こいつ頭固い?』

「じゃ、始めましょうか?」


師範が声をかける

「はじめ!」

練習していた道場の弟子たちも、この立ち合いを見守っている。
道場の実力者と新選組の幹部の立ち合いに興味があるようだ。

『こうやって見ると、美形だなぁ・・・こいつ。』

藤堂がちょっと気を抜いて、違うことを考えた瞬間・・・
隙をつくように、突っ込んできた。

『うわ、やべぇ。さっきより、動きが早え』

ぎりぎりのところで、なんとか竹刀で受け止めた。
必然的に鍔迫り合いとなる。

『思ったより力はあるが・・・』

押し返せないほどではない。
一気に力をかけ、押そうとした瞬間・・・押されていた力が消えた。
相手が一歩引いたのだ。

バランスを崩しそうになるが、立て直した瞬間に、素早く鋭い突きがくる。
かろうじて避けるが、更にバランスを崩す。
そこに更に竹刀が迫る。

といった感じに、相手の動きを利用し惑わし一瞬の隙をその速さで突くという動きに翻弄されつつも、
幹部という意地もあり、なんとかさばいていく。

『そろそろ動きに慣れてきたな・・・』

『でも、流石にこれ以上はやられるわけにはいかないな。』

合わさった竹刀を一気に弾き、勝負をかける!

「おりゃ!」

・・・・

「これまで!」

審判の声がかかる
藤堂の竹刀は相手の面を捉え、相手の竹刀は藤堂の胴を捉えていた。

相打ちである。
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