Series『桜』

□覚悟〜後〜
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井上と沖田が部屋を出て、しばらくしてから山南が目覚めた。

「山南さん?」

山南は眩しそうに眼を細めながら、声をかけてきた人影・・・桜華に話しかけた。

「そこに居るのは葛木君ですか?」

「はい・・・お加減はどうですか?」

「少し気怠いですね。」

そう言って起き上がろうとする山南に、桜華は手助けする。

「君、一人ですか?」

「少し前迄、源さんと沖田さんがいらっしゃいました。
 水でも飲みますか?」

「えぇ・・・」

桜華は傍らにある茶器から、水を入れ山南に差し出す。
それを無意識に両手で受け取る。

「左手が動くようになりましたね。」

「そのようです。」

桜華は少しだけ安堵した。
山南が願った通りに、左腕は動きだし、これで剣客として生きることができるが・・・

「先程は辛い役目をさせてしまいましたね。
 申し訳ありませんでした。」

「いいえ・・」

「桜華・・・私を忘れなさい。
 私はもう人ではありません。」

「知っています・・・が、それは承服しかねます。」

「もう、貴女と同じ世界では生きられません。」

「関係ありません。」

「桜華・・・」

苦しげに桜華を見つめる。

「山南さん、人であろうと羅刹であろうと・・・貴方は貴方です。」

「強情ですね・・・」

「今更ですよ。」

そう言って、桜華は立ち上がり、

「それでは、他の幹部の方々に山南さんが目覚めた事を伝えにいってきます。」

桜華は部屋から出て行った。


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