Series『桜』

□覚悟〜前〜
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土方歳三たちが、その場に着いた時には、すべては終わっていた。

「桜華・・・」

部屋に入ると血塗られた刀を握りしめた葛木桜華が立ちすくみ、その足元には白髪化した山南が血まみれで息荒く倒れている。
そして、桜華の背には雪村千鶴がしがみ付いていた。

「土方さ・・・」

千鶴が入口の土方達に気が付き、気が抜けたのかそのまま気を失う所を土方が支え、山南の許には沖田総司と斎藤一が様子を見に来た。

「山南さんの様子は?」

土方が問いかけに斎藤が答える。

「傷は治り始めているようです。」

「そうか・・・薬は効き始めているってことか・・・後は・・・死ぬか、壊れちまうか・・・」

山南を見つめながら、土方は独り言のように呟く。

「沖田は山南さんを、斎藤は中庭で伊東一派をけん制してくれ。」

土方は部屋の入り口で待機をしている、永倉新八と原田佐之助を見て、言葉を続ける。

「永倉はこのまま前川邸の前で待機、原田は・・・桜華を連れて、俺と来てくれ。」

「あいよ。」

原田は桜華に近づき声をかけた。

「大丈夫か?」

ここでやっと桜華は山南から目を離す。

「あ・・・左之さん・・・」

ゆっくりと原田のほうを向く桜華。
原田は桜華が強く握りしめている刀を剥がす様にもぎ取り、落ちている鞘に納める。

「いくぞ。」

そう言って桜華の肩を抱き、土方の後を追って行った。


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