Series『現桜』

□The 10st.「思惑〜山崎side〜」
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これが俺と彼女の初めての対面だった。
ちょうど隊務があったので、彼女を慣らす為に共に仕事をした。
男一人より女連れとしての方が警戒されなくて良い場所でも有ったわけで。
今回はそういう仕事だった為、非常に助かった。
その後、様々な仕事を共にこなしてきたが、監察としても優秀で、俺達が気づかない部分にも目が行き届き、自分としてはそのまま監察として、一緒にやっていきたい気持ちが大きくなっていった。


が、俺の中でいつしかその気持ちに、同じ新選組隊士だけではなく、男女の情がいつの間にか混じっているのに気が付いた・・・


けれどもその時にはもう彼女の目は、総長に向けられていた。
そして、総長も・・・

ある時、町で二人を見かけた。
彼女はいつもの男装ではなく、上品なそれでいて彼女によく似合った高そうな女物の着物を着ており、髪も結い上げて簪を刺していた。
俺はいつも監察の仕事で、彼女の女装は見慣れていた為、直ぐに分かったが、アレならば他の隊士が見ても解らないであろう。
その隣には、山南総長が。
総長はいつもの姿だったが、表情が違う。
いつもの何を考えているかを隠すような笑みではなく、慈しむような目で笑いかけている。
そして、彼女もそれに答えるように、穏やかな笑みを返していた。

俺はその二人の姿を見て、何故か安心を覚えた。
二人の間に入り込む余地など無く、またそうする気持ちも俺には無い。
俺は彼女が幸せであればいい・・・そう思っていた。
だが、俺の思いとは裏腹に色々な事が起こった。
けれども、二人の関係は終わることなく、絆は途切れることはなかった。
だからこそ、あの時・・・

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