Series『現桜』

□The 7st.「制服」
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葛木桜華が転校してきて、1週間がたった。
教頭兼古文教師 土方歳三は、古文教科準備室に、1年保険委員 山崎烝を呼び出していた。

「どうだ、桜華の様子は?」

「はい、女性一人という環境は、なんとも思っていないようですね。」

「だろうな。」

前世では、あの新選組に居た女である。
中身が変わってなければ、問題はないだろう、本人的には。
ただ、あの時と違うのは、時代は勿論の事、桜華が女性と周りが解っているということだけ。

「で、記憶の方は?」

「えぇ、そちらは無いようですね。」

「やはりな。」

「というと?」

「あぁ、こないだの日曜から、近藤さんの道場へ通っているんだが、その時も記憶が無いように思えたからな。」

「なるほど・・・で、その時の彼女の様子は?」

「剣の太刀筋は、以前の名残が有るようだったな。」

「いや、そうじゃなくて・・・」

「あぁ、解っている・・・」

そこで土方は顔を曇らせ、言葉を濁す。
実は桜華が道場から帰ったと、山南敬助から黙ったいた事を、例の黒い笑みでネチネチと問いつめられたのだ。
土方はその時のことを一瞬思い出していた。

「副長?」

「いや、なんでもない。」

軽く咳払いをすると、話を続ける。

「まぁ、俺も夜の稽古で会っただけだからな。
何とも言えない。」

「そうですか。」

「で、山南さんの様子は?」

「えぇ、普段と変わらない様子ですが、ただ・・・」

「ただ?」

「毎朝、窓辺に佇んで外の様子を見ています。」

「というと・・・」

「彼女が登校する様子を見ているようですね。」

その山崎の一言に、大きな溜息をつきながら。

「何やってんだ、山南さんは。」

「まったくですね。」

「取り敢えず、桜華に記憶が無い以上、慎重にやらねぇと。」

「そうですね、無理強いはしたくありませんし、彼女の意志は尊重しないと。」

「あぁ、引き続き頼むぞ。」

「承知しました。」

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