Series『現桜』
□The 5st.「道場へ(2)」
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葛木桜華が着替えて道場に戻ってくると、もう何人かが集まっていた。
「あ、桜華ちゃん、こっちこっち。」
沖田総司に呼ばれ、そちらにむかうと傍に一人の少年が立っていた。
「平助、この子がさっき言ってた桜華ちゃん。」
「へぇ・・・ほんとに総司といい勝負したのか?」
「何、僕が剣道の実力で嘘をつくと思う?」
「そりゃ思わないけどさ・・・女だろ?あんまり信じらんなくてさ。」
平助と呼ばれた少年が疑いの眼で、桜華を見つめる。
「じゃ、あとでお手合わせする?えっと・・・」
「あ、俺は藤堂平助っていうんだ。」
「私は葛木桜華、よろしく藤堂君。」
「平助でいいよ、みんなそう呼んでるし。」
「了解、平助。
まぁ私のことは好きに呼んで。」
「うん、じゃ桜華で。」
「いきなり呼び捨てかよ。」
桜華は苦笑する。
「えー、さっき・・・」
「うっそ、いいよ。気にしないから。」
そこで、近藤が山南を伴って、現れた。
「みんな、集まってくれ。」
近藤勇の一言で、道場にいる者達が集まってくる。
ここで皆の前に出され、自己紹介をさせられた。
そして、沖田といい勝負をしたという話を、聞かされていた近藤は実力が見たいということになり、最初・・・
「僕が相手するよ。」
と、沖田が立候補するものの、相手の実力に合わせるってことをしない(容赦しない)沖田相手だと実力が見難いと思い、近藤は山南敬助を指名した。
山南はちょっと複雑な気持ちだったが、近藤が純粋に実力が見たいだけなのはわかっており、指名を受けることにした。
沖田はちょっと不満そうだったが、近藤の言うことに素直に従う。
桜華も、少し複雑な気持ちだった。
先程、道場の入口で初めて山南を見たとき、あの胸が締め付けられるような想い。
『何故?』
近藤や沖田、今会った藤堂などにも、懐かしさを感じるが、山南だけは懐かしさだけでなく、なんとも複雑な想いに駆られる。
とはいえ、考えてもわかるわけでもなく、
『今は集中しないと。』
大きく一息付くと、桜華は面を付けた。
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