Series『現桜』
□The 20th.「海(1)」
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「たまちゃん、帽子かぶらないと。」
千鶴がハシャグたまに帽子を被せる。
「は〜い、千鶴ちゃん。」
「よっと。」
掛け声と共にたまを抱え上げる桜華。
「それと余り遠くに行っちゃ駄目。
迷子になっちゃうよ。」
「うん、桜華おねぇちゃん。」
すっかり二人に相手してもらいご機嫌のたまは、海について着替えた途端、走り出してしまい桜華と千鶴が追いかけて来た所だった。
たまを捕まえた二人は近藤達の所に戻ってきた。
「二人とも、ありがとね。
こら、たま、勝手に行っては駄目でしょう。」
二人を出迎えた つねは桜華から たまを受取りつつも注意する。
「は〜い、ごめんなさい。」
たまはションボリと謝る。
そこに千鶴が。
「私もしっかり見る様にしますから、つねさんもそんなには。」
「千鶴ちゃん、そこは躾よ。
それと千鶴ちゃんだって、たまの相手ばかりでは・・・」
「あ、あ、大丈夫ですよ、たまちゃん好きですし。
それに・・・」
言いにくそうに言葉を濁す千鶴に、桜華は疑問を投げかけた。
「それに?」
「私、余り泳ぎが得意じゃ無くて・・・」
「なんだ、そんな事か。
気にするな、泳ぐだけが海の楽しみ方じゃないし。」
桜華がションボリとする千鶴に微笑む。
「波打ち際で遊ぶのも良いモノさ。
つねさんとたまちゃんも行きましょうよ。
今日は波も穏やかですし、ココは遠浅って聞いてますから、たまちゃんも大丈夫ですよ。」
それ迄、黙ってやり取りを聞いていた井上が声をかけてきた。
「そうさ、いっておいで。
荷物は私らが見ているから。」
井上は目線を荷物の置いて有るパラソルへ向ける。
その目線の先を見ると、パラソルの下には一応水着には着替えたが、サングラスをかけて(これで紋々があれば●●●)寝っ転がって居る土方と、海まで来て本を読んでいる山南の姿が。
「じゃ、お言葉に甘えて、行きましょうか?」
「ですね。」
つねの一言で4人は海際へ向かった。
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